武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 パロマ瞬間湯沸器の<連続殺人事件>について思うこと(画像は霧降高原で見かけたクルマユリ、凛として高原の冷気の中で咲き誇っていた)

toumeioj32006-07-19

 パロマ工業のガス瞬間湯沸器による20件にものぼる死亡事故が連日報道されている。一酸化炭素は無味無臭、自分が中毒しかかっているとの認識が被害者にまったくないまま意識不明に陥り死に至る。何とも痛ましく関連の記事を読むたびに胸が苦しくなってしまう。この国に住む人でガス瞬間湯沸器のお世話になったことのない人はいないのではないか、それほどに普及していながらこれほどまでに危険きわまりない器具だったとは、恐ろしさを通り越して背筋が寒くなる。今後、調査がすすめば死者の数はもっと多くなるだろう。
 この事件は、あえて言えば、<連続殺人事件>なみに取り扱い、再発防止を含む万全の対策が確立するまで追及の手を緩めてはならない事件だという気がする。この種の<連続殺人事件>的な事故には、複数の要因が絡まり事件の連続性と重大性を導いてしまうことが多いが、今回のパロマの件からもそのような様相が浮かび上がってくる。
 ①当該パロマ工業(株)の製造者側の問題、製品の欠陥を認識していながら、また、製品の不正改造の危険性を認識していながら、事故防止のための抜本的な対策を講じてこなかったこと。この事実は、刑事事件にも相当する犯罪性がある。私が<連続殺人事件>と命名する所以だ。不正改造が可能なこと自体が製品の重大な欠陥だと製造者は認識すべきではないか。新しいうちは安全でも、古くなったら危険になるなんて、何と恐ろしい製品なのだろう。誰がどんな条件で使用するか分からないほど普及しているだけに、これほど怖いことはない。
 ②読売新聞の報道によれば、93年頃すでに「パロマ工業製の瞬間湯沸かし器による死亡事故が相次いだ問題で、通産省(現経済産業省)が1993年、死亡事故多発の重大性を認識し、LPガス事業者向けに不正改造の危険性を訴えるパンフレットまで作成しながら、その後、都市ガスの担当部署への連絡がなく、都市ガスによる死亡事故が続発していた」とのこと。これは酷い。このようにして死に至る危険の機器が野放しにされたことによる死亡事故の増加、まさに<連続殺人事件>と呼ぶしかないのではないか。行政が犯すミスには、このように国民の大量死にいたるミスがあることを決して忘れまい。なぜこんなミスが発生したのか、刑事事件並みに厳しく追及する必要がある。
 ③家庭用の燃料として便利だが一歩間違えば、一酸化炭素による死亡事故と、空気との混合によるガス爆発という二重の危険性に対する徹底的な予防対策が、国全体として甘いこの国の風土とでも言いたくなる家庭用ガスに対する認識の甘さ、この際、この点にまで遡って対策を考える必要があるのではないか。
 マスコミは、あらゆる方向から今回の<連続殺人事件>をテコにして、問題を追及して行く義務がある。最終的には、家庭用ガス使用にかかわる安全対策基本法のような立法措置が必要になってくるかもしれない。集合住宅のような居住形態(例えば高層マンションにおける大規模ガス爆発による多数の巻き添え事故)までも視野に入れた基本法を検討すべき時に来ているのかもしれない。