武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 わかりやすい散歩の友 「学校のまわりの草木図鑑」おくやまひさし(大日本図書) 

toumeioj32005-05-30

 表紙のレイアウトやネーミング、春夏秋冬の4冊それぞれの価格が2500円、合計が1万円の価格設定などから考えると小中学校の学校図書館あたりをユーザーに設定した書物のように思われる。内容はいずれも140数ページと決して厚くはないが、やや高いので、一般の読者の手にはあまり行き渡らなかったかもしれないので紹介しよう。
 まず何よりも内容が素晴らしい。①写真がいい。写したい草木や花々をしっかりとらえていて、草木花々の特徴をはっきり浮かび上がらせている。観察の視点が明確。私は、おくやまさんの写真を草木花々を写すお手本にしている。②解説の文章が非常にわかりやすい。小中学生向けらしく多くの漢字にルビをふってあり、文章は明快、丁寧、しかもくどくない。パソコンについてくるマニュアルも、おくやまさんのように分かりやすく書けないものかしら。私は植物に疎いほうなので、読んでいて何度も知らなかった植物の珍しい生態を教えられうならされた。③難点をいえば、取材範囲が関東地方に偏っている気がしないでもないが、逆に、私のように関東に住んでいる人間にとっては実に都合が良い。季節感がしっくりくる。④絞り込まれた内容が多すぎず少なすぎずちょうど読みやすい。各140ページは持ち運ぶのに邪魔にならない。春の巻に141種、夏の巻に122種、秋の巻に135種、冬の巻に133種。とても覚えきれないが、手元に置くには丁度良い。
 休日、ぽかっと時間が空いたとき、手にとって拾い読みしていると、優しいおだやかな気分になってくる。そして、家の周りになにが生えているか、どんな花が咲いているか、ぶらりと散歩に出てみようという気になってくる。歳時記をぺらぺらめくるのも楽しいが、この図鑑も気持ちを季節の中に連れ出してくれる優れた散歩の友になってくれる本だ。