武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 登呂遺跡と芹沢美術館の印象記(画像は芹沢美術館の印象的な入り口、ここに立つだけでこの建物で生活して見たくなった)

toumeioj32006-04-12

 焼津の町からすこし足を伸ばして、登呂遺跡を見に行った。登呂遺跡は、この国の社会の教科書では、弥生時代の稲作を象徴する遺跡の代名詞のようなもの、国民的な知名度を持つ遺跡だが、実際に行ってみた人はそれほど多くないようだ。20年ほど前にツーリングの折に立ち寄ったことがあり、今回の再訪となった。大規模な水田跡が青々と稲穂を連ねていた。
 登呂博物館にいくと、朝の時間帯だったせいか人影も少なく、1階の参加体験型の展示指導員の方から、丁寧な説明と体験指導があった。2階は展示室となっていて、発掘された木製の展示品と土器が並んでいる。学校の社会科見学が多いせいか、全体に説明が分かりやすい。
 登呂遺跡に隣接して、芹沢硑介美術館があったのでついでに見てきた。白井晟一という名の建築家の設計による建物だそうだが、まず、美術館の建物が素晴らしい。四角い石を積み上げた1階建てのシンプルなデザインだが、その建物自体が鑑賞に値する見事さ。建物だけでも見る価値は十分にある。
 展示品は、作品もさることながら、展示方法にゆとりがあり、光の当て方も落ち着いていて、心しづかにゆったりと鑑賞できる。これまで名前を意識しないで見てきたが、暖簾や手ぬぐい、風呂敷など、ああこれが芹沢硑介のデザインだったのかと、きっと思い当たる懐かしい感じの作品群。書物の装丁などでもきっとどこかで眼にしたことがあるはず、それほどにこの国の生活に溶け込んできたデザインをまとめて見たことはとてもよかった。芹沢ファンならずとも楽しめるので、心を落ち着けたい人におすすめ。