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 くぬぎ山産廃訴訟

 ローカルニュースなので、ほとんどの方の目に触れることのないニュースだと思うが、環境にかかわる裁判の判決としては、いくつかの画期的な内容を含む判決だと思うので、2月8日の埼玉新聞の記事を全文引用させていただこう。この裁判は、10年ほど前にダイオキシン汚染で評判になった所沢市北部の通称「くぬぎ山」で操業する大手の産廃業者への操業許可を不服として、許可をだした埼玉県を周辺住民が訴えた行政訴訟
 産業廃棄物の破砕施設を巡る行政訴訟は珍しく、しかもこの国の訴訟状況からして、すべての情報を行政が把握している関係から、住民が行政に勝訴する確率が極めて低いにもかかわらず、今回の判決は珍しく住民側の一部勝訴の判決だった。前置きはこれくらいにして、文をお読みいただきたい。

「1施設の許可は違法」 処分能力で過少申告 くぬぎ山産廃訴訟  

 くぬぎ山の産業廃棄物処理業者に県が処分業の更新を許可したのは違法として、入間郡三芳町などの住民約百七十人が県を相手取り、更新許可取り消しを求めていた訴訟の判決が七日、さいたま地裁で言い渡され、豊田建夫裁判長は、七つの産廃の破砕施設のうち一施設の許可は違法として、住民の訴えを一部認めた。
 同訴訟は二〇〇一年六月、くぬぎ山で廃プラスチックを燃やしていた三芳町産廃処理業者に処分業許可の更新をしたのは違法として住民側が県を提訴。業者はダイオキシン排出規制が強化されたことから焼却炉を撤去し、破砕処理への変更を県に届け出たが、住民側は「業者が処理能力を過少に申告している」として、〇二年十二月に許可取り消しを求めて追加提訴した。
 判決で、豊田裁判長は焼却施設について「焼却の問題は施設が撤去されたことで許可の問題はなくなった」として請求を認めなかった。破砕施設については、六施設は処分能力の申告に違法性はないなどと判断。残る一施設について「処理能力を過少に申告していた」と違法と認めた。
 判決後に会見した住民代表の井草志乃さん(51)は「裁判を起こした当時は焼却炉から黒煙が上がっていて、とにかく煙を止めようと切実な思いで裁判を始めた。焼却施設がなくなって煙は止まったが、目に見えないものへの恐怖があった。原告一人一人の努力の積み重ねで、環境を自分たちで守ることが少しでもできて良かった」と話した。
 判決に上田知事は「変更許可処分の一部について県の主張が認められず遺憾。今後、判決内容を十分検討した上で対応したい」とのコメントを出した。

 このほかに、この判決は、公害の被害が及ぶ範囲を認定する原告適格の範囲を半径3km以内とする画期的な判断など、随所に優れた内容を含む最近ではなかなか珍しい良心的な判決だった。局地的なローカルニュースながら、注目すべき内容だったので、あえて引用させてもらった。