武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『21世紀サバイバル・バイブル』 柘植久慶著 (発行小学館)

 古書店の105円の単行本コーナーをぶらぶらしていて何となく手にした本だったが、ほとんどどのページにも他人ごととしてすまされないような恐ろしい想定の指摘がなされていて、ついつい最後まで読まされてしまった。読んでいて決して楽しい本ではないが、読み出したら止められない。いつの時代も同じだろうが、今の時代には今の時代特有の怖さがあることをしみじみと知らされて読んで損はなかったと思った。

 ウィキペディアではサバイバルを次のように定義している。「人間が文明や人間社会から隔絶された状態もしくは文明の恩恵を十分に享受し難い状態で、生存しつづける事。この状態は、当人が死ぬか、文明社会に帰りつくまで続く。」非常にわかりやすいので感心した。
 このように、何らかの事情で、<文明社会の恩恵>を十分に享受できない状況に陥った場合を、いかに想定するか、その想像の手助けをしてくれるのが、この本の第一の長所。18項目に分けて、現代の日本人が遭遇するかもしれないサバイバル状況を想定している。実際に発生した事例をたくさん引用しながらの指摘、専門的に危機的状況について考え続けてきた人でなければ、これだけの想定は出てこないことだろう。これが非常に参考になる。
 この本の第二の長所は、それらの危機的な状況に遭遇した場合の、対処方法を具体的に指示してくれているところ。この点は、著者の言うとおりにするかどうかはさておき、専門家の一つの対処法として、自分だったらどうするか、考えるヒントとしてこれも非常に参考になる。<情報収集>→<最善の判断>→<行動>基本的には、このパターンなのだが、何が最善の判断となるか、場合によっては生死を分かつことになるので、考えておいても無駄にはならない。なるほどと納得できる指摘が随所にあった。
 同じ著者による「新版サバイバル・バイブル」という本も、同じ棚に並んでいたので買ってみた。構成は違っているが、内容的にはよく似ている。たまたま、2冊買ってしまったが、21世紀サバイバルを読めば十分という気がする。どちらか1冊、読んでおいて悪くはない。内容を生かすような場面に遭遇しないことが一番なので、「君子危うきに近寄らず」などと呟きながら、21世紀サバイバルの目次を紹介しておこう。

1、台風と豪雨
2、地震
3、噴火・雷・竜巻・雪崩
4、動物による被害
5、伝染病と風土病
6、火災
7、航空機事故
8、鉄道事故
9、自動車事故
10、船舶事故
11、暴力犯罪
12、自宅周辺での危険
13、外国での身の危険
14、詐欺と金融トラブル
15、コンピュータ関連の問題
16、医療の危険
17、各種のテロ
18、争乱と戦争
19、生き残るための必需品

 深刻に考えると生きているのが怖くなるので、深読みしないようにさっと流し読みした程度だが、参考になったりヒントになったりした箇所は数多い。ご自分が平和ボケ安全ボケしているなと思われる方は、是非どうぞ。