武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 イギリス旅行10日間⑦

 この日まずはじめに行ったのは、イングランド南西部のサマセット州にあるバース市、そこにある古代ローマの温泉浴場遺跡と世界でもっとも美しい集合住宅といわれるロイヤルクレッセント。
 最初に行ったのは、芸術的といいたくなるほどに見事な集合住宅、ロイヤルクレッセントの半円形の弧を描く建物とそれが取り囲む芝生の庭の対照の美観、日本の無様なマンション群と比較して、美しく暮らすことにかける情熱の落差に愕然となった。美しいものは残り、醜いものは取り壊され更新される運命にあるということを痛感した。
 次に見たローマ浴場博物館にはさらにびっくり、古代ローマの浴場跡はこれまで何度か見てきたが、今なお温泉がわき続けており、遺跡全体がこれほど大規模に復元されている遺跡は、これまでお目にかかったことはなかった。古いもの好きのイギリス人の情熱がひしひしと伝わる遺跡となっている。博物館を名乗っても決して恥ずかしくない施設だった。
 改めて、古代ローマの衛生思想というか、浴場を是が非でも必要とした、健康維持にかける執念を実感した。医療が未発達の古代社会でこそ、日々の入浴の習慣は、ローナ人たちの健康を支える必須かつ神聖な儀式だったに違いない。 

 バースから60km移動して次に行ったのがストーンヘンジ、分からないことだらけの謎の古代遺跡、なんと紀元前3000年前後の今から5000年移住前の人間の遺跡というから凄い。宗教的な意味と天文学的な意味が推測されているようだが、360度に遮るものなく開けた真っ平らな草原に唐突に立っている石の構築物の存在感は、現場に行ってみなければなかなか実感できそうにない。知識として、上から見た形を知っているからいいようなものの、ストーンヘンジを見下ろすことができるものの誰もいない人間に遺跡の形を上から見ることは不可能だったはず、ナスカの地上絵のような不思議さが、何となく神秘感をさそう。
 周りを一周しながら、澄み切った晴天の夜空の下、満天の星空が覆いかぶさる中で、このストーンヘンジの縁を歩いてみたいという気がしてならなかった。完全な半球状の星空の中心に横たわるストーンヘンジの巨石群、その存在感を体感できないことが非常に残念でならなかった。 (左の画像は、大草原の一角に唐突に存在知る超広大遺跡、ストーンヘンジ、大人気で駐車場にはびっしり観光バスが駐車していた)




 この日最後に行ったのは壮麗なウィンザー城、イギリス王室が所有し、現存する人が住むお城としては世界最大の45000㎡。何とも広大で壮麗、イギリス王室の私的財産、その途方もない富の巨大さの象徴に目を瞠ったことだった。イングランド王国の富の集積の大きさの一端にふれ、あいた口がふさがらない。観光客にあそこまで見せてしまうその開放的なことにつくづく感心したことだった。
 今夜からはいよいよロンドン、旅も終りに近づいた。