武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 イギリス旅行10日間⑥

 この日の目玉は、あの偉大な劇作家、シェークスピアの生家があるストラットフォード・アポン・エイボンの観光。この街のシェークスピア関連ポイントは、生家と埋葬された教会とスワン劇場の3ヶ所らしいが、観光したのは前の二つ。
 実際に行って見ると、生家に入って見学しても、なるほどこんなものかとは思ったものの、あの豊穣極まりないイメージと意味が溢れ出るような台詞とも、激しい起伏にとんだ作劇術とも、生家のたたずまいは何の関係もなく、大型の古民家としてどっしりと存在している、それ以上ではあるはずもないのだった。 (画像はよく保存されているシェークスピアの生家)
 ホーリー・トリニティ教会にしても大きなスペースを占拠して料金まで徴収して丁重に葬られてはいるものの、化けて出てくるわけのものでもなく、やはり、偉大な劇作家シェークスピアは残された浩瀚な脚本の中にしかいないということを再確認したことだった。
 生地を訪れた記念に、1冊英文のシェークスピア全集をお土産に購入したが、その重いこと、廉価版を買ったのだが重量1.9kg、B4サイズの厚さ5センチ、索引を含めて1300ページを超える分厚さ全文2段組み、しかも内容のほとんどが世界史的な傑作ぞろい、やはりこれがシェークスピアだとつくづく思ったことだった。

 次の観光は、イギリスでもっとも美しいと言われているというコッツウォルズ地方のバイブリー村の散策、街中を小川が音を立てて流れ、かわいい橋がかかっているバートン・オン・ザ・ウォーター、石造りの中世風の家屋の周りに花々が咲き乱れ、心いやされる美しさとでも言おうか、イギリス人が昔を振り返る時の懐古の原風景なのかもしれないという気がした。古い村が、古いままよく保存されていることに感心した。 日本にもつい高度成長の前まで、町中に小川の清流が流れる、古くて懐かしい田舎町は各地にあったものだが、今はほとんど残っていないことだろう。川で遊んでいた鴨に、柿の種とピーナッツをあげて遊んだ。鴨はすっかり人に馴れていた。 (画像は、花々が咲き乱れる石造りの民家)