武蔵野日和下駄

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 インドツアー印象記(3)


 この日も朝早くホテルを出て、有名なホテルタージマハールのすぐ脇のアポロバンダと言う小さな港から貸し切りの舟に乗り、1時間ほどかけてエレファンタ島へ。
 小さな船着き場が桟橋の先端にあり、そこから500mほどをオモチャのような汽車で運ばれ、100段ほどのコンクリートの階段を登るとそのすぐ先に石窟の入り口が見える。
 <観光した世界遺産その4>はエレファンタ島石窟寺院群、島内には7カ所の石窟寺院があるらしいが、時間がないので観光したのはその中の一つだけ、世界遺産の基準では、1番と3番の基準を満たすものとされているが、17世紀頃、ポルトガルの軍隊が射撃の的にして遊んで、破損が著しい。インド・ネパール地方で盛んな民族信仰であるヒンズー教の神、シヴァ神信仰の石窟寺院遺跡である。
 岩山をくりぬいて作られた一番大きな石窟に入ると、正面奥に破壊・歓喜・調和の三つの表情を持つ大きなシバ神の上半身像レリーフ、左右にも様々なポーズのシバ神像が彫られているが、保存状態はよくない。

 ヒンズー教は、非常にたくさんの神々からなる多神教、石窟の様々のポーズを取る神々の中心にでんと構えるご神体はなんとリンガと呼ばれる男性の象徴、明かりに透かして見ると抽象化されたご神体らしきものが光の中に浮かび出る。 (画像の奥の方で光のなかに浮かぶのがご神体リンガ)

 <観光した世界遺産その5>はチャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅、次の世界遺産はチャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅という駅の建物、2番と4番に適合するというのが登録理由、ベネチアゴシック建築様式らしいが、インド中央鉄道の現役の始発駅、インドで最も乗降客の多い駅という。建物自体の外観は素晴らしいが、駅としての使われ方が極めて印度的だった。線路に白い粉を散布しているので何かと見たら、列車から線路に落ちた人糞の塊が所々にあり、それの消臭と消毒のために石灰のようなものを撒いているところだった。インドでは世界遺産もかくのごとしと言うことだろうか。 
 ホームで周りを見回すと、貧富の差の激しいインド社会がありあり、そこら中で赤裸々な日常生活が繰り広げられている。到着するセカンドクラスの混雑ぶりの物凄さ、部分的には敗戦直後の混乱した日本社会もこうだったのではないかと思わせるような光景だった。
 この日の午後は、この世界遺産駅からオーランガバードへ6時間半かけての列車移動、私たちが乗ったのは多分4番目のエアコン座席クラス、9時を過ぎてオーランガバードのホテルに到着、食事をしてすぐ寝てしまった。だんだんインドらしくなってきた。

 ちなみにインドの列車には7つの等級があるので、その詳細を分かりやい<地球の歩き方>から引用してみよう。

・AC 1st→快適なA/C付きの1等座席で、コンパートメントになっている。イスの幅は広くゆったりしており、食事や飲み物のサービスもいたれりつくせり。まるで飛行機のビジネスクラスに乗っているようだ。コンパートメントには内側から鍵もかかる。
・AC 2-Tier→ A/C付きの寝台車で、ベッドは2段になっている。寝台列車ではこれが一番快適なクラス。寝台の幅にも余裕がある。
・AC 3-Tier→ A/C付きの寝台車で、ベッドは3段。寝心地は悪くない。
・AC Chair Car→A/C付き座席車。席はリクライニングシート。
・1st→コンパートメント形式の1等車。
・Sleeper→3段ベッドの寝台車。 A/Cがなく、小さなフアンが回っている。料全はA/C付きの半分以下。
・2nd→予約不要の自由席だが、込んでいて座れないことも。クッションなしの木製のシートは硬いので長距離を乗るには辛い。

 なおインドの列車では、走行中に等級移動ができないように、クラス別の車両間には連絡通路は閉ざされている。これも実にインドらしいと感心した。 (画像のように別の等級車両の間には通路はなく断絶がある)