武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 インドツアー印象記(2)

 今回のツアーは中部と北部のインドの世界遺産を出来るだけたくさん見るのがテーマの、非常に分かりやすいツアー。通過する町や村にはほとんど興味を示さず、ガイドは訪れた世界遺産に集中するという明快なもの、かなり割り切った内容のツアーだった。
 ちなみに世界遺産の登録基準は現在全部で10あり、1〜6は文化遺産基準、7〜10が自然遺産基準となっている。それぞれの世界遺産がどの基準に適合しているのかにも注意しながらたどってゆくことにしよう。念のため日本のユネスコのサイトから6つの文化遺産の登録基準なるものを引用しておこう。

(1) 人類の創造的才能を表す傑作である。
(2) ある期間、あるいは世界のある文化圏において、建築物、技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展における人類の価値の重要な交流を示していること。
(3) 現存する、あるいはすでに消滅した文化的伝統や文明に関する独特な、あるいは稀な証拠を示していること。
(4) 人類の歴史の重要な段階を物語る建築様式、あるいは建築的または技術的な集合体または景観に関する優れた見本であること。
(5) ある文化(または複数の文化)を特徴づけるような人類の伝統的集落や土地・海洋利用、あるいは人類と環境の相互作用を示す優れた例であること。特に抗しきれない歴史の流れによってその存続が危うくなっている場合。
(6) 顕著で普遍的な価値をもつ出来事、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または明白な関連があること(ただし、この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。


 <観光した世界遺産その1>はクトゥブミナール遺跡群、適用された遺産基準は文化遺産4番、中心になっているのは、ヒンズー様式とイスラム様式が混在する72.5mの世界で一番高いミナレット。周囲にはイスラム寺院の遺跡が散らばる1200年ごろのムガール帝国の建築様式を代表する文化遺産
 建設を命じたアイバクは、奴隷の身分から身を起こして、初代のインドイスラム王朝を築いたと言われる非常に興味深い人物、高さと広さを求める強い権力者の典型的なタイプ、素晴らしい建築群はその英雄的な存在の反映だろう。高さもさることながら塔のまわりを飾るレリーフが素晴らしい。
 以下にグーグルマップの画像のアドレスを引用しておこう。航空写真を拡大すると様子が分かります。
http://maps.google.co.jp/maps?sourceid=navclient&hl=ja&rlz=1T4GGLR_jaJP245JP246&q=%E3%82%AF%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%96%E3%83%9F%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%83%AB&um=1&ie=UTF-8&sa=N&tab=wl

 <観光した世界遺産その2>は、レッド・フォート(紅い城)、基準の2番と3番と6番の基準を満たしているとされる建造物群。17世紀にムガール帝国五代皇帝シャー・ジャハーンが築いた城塞、代表的な建物が紅い色をした砂岩で築かれている広大なお城。非常に大きな遺跡なのでグーグルアースの画像を引用しておこう。
http://maps.google.co.jp/maps?sourceid=navclient&hl=ja&rlz=1T4GGLR_jaJP245JP246&q=India-RedFort&um=1&ie=UTF-8&sa=N&tab=wl

 <観光した世界遺産その3>は、フマユーン廊2番と4番の2つの基準に適合するとして登録されているもの。ムガール王朝の不慮の死を遂げたフマユーン皇帝の没後、皇帝を死を悼むその王后の指示によって建設された霊廟、タージマハールで頂点をきわめるムガール建築様式の出発点となった建物と庭園。イスラムの様式にインド的な具象が混ざり合い、不思議な味わいの装飾が何とも美しい。時間をかけてみるともっと楽しめそう。

 デリーでは、世界遺産になっていないところをただ一つ訪問した。それはインド独立の父、故ガンジー首相のラージガートと呼ばれる立派な墓地、今も花が供えられ火がともされたくさんのインド人が祈りに訪れる場所となっている。



 この日は、以上のデリーにある3つのムガール帝国の代表的な世界遺産を観光した。かつて栄えたムガール帝国はデリーを中心に北部インドで栄華を誇った帝国、テリー周辺に歴史遺跡が集中しているのはそのため。ちなみにムガール帝国は16世紀初めから19世紀中頃までの3世紀半の期間北部インドを支配した。デリー市内のその他の観光スポットには目もくれず18時の国内便でムンバイへ飛び、20時過ぎにムンバイに着きホテルにチェックインしてすぐに就寝。いよいよ世界遺産だけを見るインドツアーが始まった。