武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 インドツアー印象記(5)


 毎日、寺院ばかり見ていて少し好奇心が疲れてきた。現地のガイドさんの話では、インド人のほとんどが何らかの宗教を信仰しているという。ちなみにインドの人口に占める各宗教の割合をWikipediaから引用すると以下のようになる。 (上の画像は合成したアジャンタの石窟寺院群のパノラマ、画像をクリックしてオリジナル画像をどうぞ)

ヒンドゥー教徒―80.5%
イスラム教徒――13.4%
キリスト教徒――2.3%
シク教徒――――1.9%
仏教徒―――――0.8%
ジャイナ教徒――0.4%
・その他―――――0.7%
(2001年国勢調査)※10年に1度の国勢調査では、これが一番新しい。


 ごく僅かのその他の宗教と無宗教が、0.7%に入るのだろうか。インドが基本的に信仰の国だと言うことは間違いない。

 さて、オーランガバードにはもう一つ、世界遺産の石窟寺院群がある。この日行った世界遺産その7>はアジャンタ石窟寺院群、1番と2番、3番と6番の基準を満たすとして世界遺産に登録されている。
 川に浸食されて出来たと思われる峡谷の湾曲部の断崖に、30もの仏教石窟が550mにわたって連なっている。古いものは紀元前に作られたものもあり、この国における古代仏教信仰の重要な遺跡となっている。
 石窟は大きく分けて紀元前1世紀から紀元2世紀ごろまでの僧院風のヴィハーラ窟と、5世紀半頃から6世紀にかけて作られた仏塔などが据えられたチャイティヤ窟に分けられる。 (右の画像のように石窟の内部には素晴らしい彫刻や壁画がたくさんあるが、保存状態がよくなく、著しい劣化が進行していて、インド仏教の衰退を見せつけられる思いがする)
(追伸)現地ガイドの話では、石窟の壁画の劣化が進んできたので、来年からは石窟を閉鎖し、近くに建設中の銀色ドームにレプリカを展示することになるという。現物を見られるのは今年が最後とのことだった。これから行かれる方は要チェック。

 紀元前からの数多くの遺跡があり、仏教発祥地でもありながら、インドにおける現在の仏教徒がわずか0.8%しかいないというのはどういうことなのだろうか。鮮やかに彫り込まれ、色彩豊かな壁画に飾られた仏教信仰の盛衰について、大きな疑問がわき上がってきた。帰国してから少し調べてみたら、5世紀から12世紀にかけてヒンドゥー教からの執拗な弾圧によって13世紀頃にほぼ壊滅的状態に至ったらしいということがわかった。インドだからといって他宗教に寛容とは限らないようだ。三大世界宗教の一つである仏教が、発祥の地インドで遭遇した悲劇が、奇妙に納得できない後味を残した。
 午後、列車をつかってプシャワールからボパールへ移動した、ホテル着は夜遅くなった。