武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 インドの情報源お勧めベストスリー=インドを象徴する(?)分厚くて重くて嵩張る3冊



 昨年暮れのインド旅行に際して、旅行前と旅行の後に、もっとインドのことを知りたくて、図書館に行ったり書店をふらついたりネットを検索したりして、インド関連書籍に多数当たってきた。その結果、以下にご紹介する3冊が、インド情報のベストスリーとしてお勧めできることが分かった。
 1冊目は、世界大百科以来事典作りに伝統のある平凡社のエリア事典シリーズの1冊、「南アジアを知る事典(新訂増補版)」(2002/4)、項目別索引をもつものとしては、これが一番充実している。前書きにもあるように、この事典は<世界大百科>の構想をベースに作られたエリア百科、インドを中心とする南アジアの歴史文化関連の語彙については、この本を当たると基本的な概念が得られるようになっている。守備範囲は広く、宗教・哲学、文学・演劇、美術、音楽・舞踊、言語・民族、カースト、生活・文化、歴史、政治・社会、経済・産業、科学・医療、考古学、地理・自然など、大項目をみてもその幅広さがわかる。
 90年代のこの地域のおおきな変化を受けて2002年に改訂され、新しい項目が書き加えられておよそ1700項目、入手するならこの新訂増補版がいいだろう。重さは1310g、厚さは約5cm、1005ページ、サイズはA5版。項目別の事典なので、素っ気ない目次だが引用しておこう。

はじめに
凡例
項目編[アーワ] *本書のメインはこの項目編にある。5〜792ページまでが事典たる主要部分。
[地域編]南アジア
インド
スリランカ
ネパール
パキスタン
バングラディッシュ
ブータン
モルディヴ
[増補項目編]
[資料編]
資料
各国便覧/貿易統計/各国の州・主要都市の人口/在外インド人の現状
在外・在日公館ー覧/南アジア各国の国歌/南アジア各国の世界遺産
南アジア史年表
文献案内
関連サイト案内
索引


 2冊目は、バックパッカーのバイブルなどと評される「ロンリープラネットの自由旅行ガイド・インド編(日本語版)」(2004/03)、インド全域を隈無くガイドする徹底した情報収集力は圧倒的、なんと1060ページにわたって2段組9ポイント活字がぎっしり詰まっている。インドを広範囲にカバーする旅の情報源としては、この本の右に出るものはない。簡潔に要約されたテキストを読んでいると、ロンリープラネットの自由旅行への思い入れがじんわりと伝わって来る。
 旅行者と言うよりも、インドでの旅行業にかかわる業界の方々にとっての必読書のような気がしてくる。創業者であるイギリス人の旅行精神が反映しているようで、旅するために必要不可欠な情報を見事に掬いとっている。重さは1160g、厚さは約5cm、サイズはA5変形版やや縦長。これ一冊を加えるだけで荷物が1ランク重くなります(笑)。内容の感じは掴めるので目次の1ページ目だけ引用しておこう。2ページ目からの目次は、都市や町や観光地の名前ごとの膨大なデータが並んでいる。コラムなども挿入され、地図も分かりやすく、写真は少ないものの、宿泊場所とアクセスと食事などの基本情報はどこもしっかりしている。

はじめに
ベスト・オブ・インド
インドの魅力
[インドについて]
歴史/インドの歴史概観/地理&地質/気候/エコロジー/動植物
政治/経済/住民/教育/インドの芸術&工芸/学術/芸術/社会&風習/宗教
[基本情報]
ハイライト/モデルプラン/旅行計画/観光客としての良識/観光案内所
ビザ&渡航書類/大使館&領事館/通関/お金/郵便&通信/参考サイト
参考になる本/新聞&雑誌/テレビ&ラジオ/写真・ビデオ撮影
時差&時間/電圧&電源/計測単位/ランドリー/健康/トイレ
社交上の礼儀/女性旅行者へ/同性愛の旅行者へ/身体の不自由な旅行者ヘ
高齢の旅行者へ/子供連れの旅行者へ/治安&トラブル/緊急のとき
違法行為/営業時間/祝日&年中行事/アクティビティ/各種教室/ボランティア
宿泊/エンターテインメント/スポーツ観戦/ショッピング/インド料理
[アクセス]
空から/陸から/海から
[交通手段]
飛行機/バス/鉄道/車/オートバイ/自転車/ヒッチハイク/船/地域の交通手段/ツアー
[デリー]
歴史/オリエンテーション/インフォメーション
オールドデリー/デリー中部/コンノート・プレース地区/その他の地区
プール/ゴルフ/テニス/各種教室/ツアー/年中行事
宿泊/食事/エンターテインメント/ショッピング
アクセス/交通手段/デリー近郊/キルキー・マスジッド&ジャハーンパナーハ
トゥグラカバード/クトゥブ・ミーナールと周辺建物群
*以下略


 3冊目は、これも事典作りに定評のある東京堂出版の「インドを知る事典」上記2冊にやや欠けている今現在のインドに暮らす人々の日常生活情報、インド人の暮らしにかかわる細目が実に丹念に取材され記述されていて感心する。写真も豊富で、文章だけで分かりにくいところをうまく補足している。事典と言っても大項目から中項目へと、ジャンル別にまとめて記述されているので、この本だけは読み物としても読み進むことが出来る。興味のある項目を拾い読みしていくとけっこう楽しめました。
 インド人に対する共感的な視線が随所に見られ、熱心な親インド派による丹念な仕事という気がした。現地でしばらく暮らす予定のある人にとっては、必読のインド案内だろう。重さは560g、厚さはハードカバーを入れて約3cm、サイズは一回り小さなB6版。以下に目次を引用するが、衣食住については小見出しも面白いので、詳しく引用する。

第1章 インドとは
第2章 インドの歴史と宗教
[インドの歴史]
[ヒンドゥー教]
[イスラーム教]
[キリスト教]
[その他の宗教](仏教/ジャイナ教/スィク教/ゾロアスター教
第3章 インドの「衣」
[「衣」の伝統的意義と役割]
・インドの風土と「衣食住」/・裸体のもつ神聖な意義/・白い色/・赤い色
・「衣」と属性表示/・ガンディーと着衣/・半裸のガンディーと政治的意図
・ドーティーとルンギー/・クルターとパージャーマー
[女性と衣服]
・幼児期の衣服/・少女から大人の女性ヘ/・サリーの特徴と着かた
・サリーとお洒落/・女性の部屋着/・ブラジャーとパンティー
[「衣」の現状と未来]
グローバル化と服飾文化の変容/・女性の「衣」をめぐる最近の変化
・インド女性のファッションの変化/・インディアン・ブランドの台頭
・インド人と下着/・インド・ファッションの将来
第4章 インドの「食」
[「食」をめぐる諸観念]
・インド人の栄養摂取の特徴/・ジャイナ教と菜食主義/・「純粋な菜食」の概念
・「食」と浄不浄/・ブラフーマンと菜食/・ブラフーマンと肉食
・菜食主義とサンスクリット化/・肉食から菜食ヘ−文化唯物論とエネルギー効率
・肉食料理の食材/・「ドライ」と「ウェット」/・「ホット」と「クール」/・「カッチャー」と「パッカー」
・バナナの多様な用途とシンボリズム/・食器の未発達/・医と食
[三度の食事]
<朝食>
・朝食前の時間/・朝食の種類/・お粥と重湯/・パンとコーンフレーク/・午前のティータイム
<昼食>
・昼食の位置づけ/・お弁当/・外食/・学校の昼食
<夕食>
・夕食の種類/・夕食の位置づけの変化
<病院の食べ物>
[お茶とお菓子]
・甘いお菓子/・甘くないお菓子/・紅茶とコーヒー/・紅茶・コーヒー以外の熱い飲み物
・牛乳が食卓に上るまで/・牛乳で作る冷たい飲み物
[「食」の現状と未来]
・グルメガィドの登場/・外食ブームの到来/・「食」の不均衡の拡大
・インドの日本食レストラン/・インド人と日本食/・「食」の二極化
・日本の食品メーカーの進出/・インド人と家庭料理
・インスタント食品の登場/・インスタント食品への需要の高まり
[お酒と飲酒事情]
酒類の現在/・インド人と飲酒/・飲酒の場所と酒の肴/・飲酒と社会問題
・地酒と地域別事情/・最近のパブ事情−都会の若者と飲酒−/・パブを訪れる客たち/・飲酒文化の将来
第5章 インドの「住」
[インドの風土と住居]
・インドの自然と伝統家屋/・暑さをしのぐ知恵−南インドを例に/・蚊に対する対策
・村落部の家−上壁の家からテラスハウスヘ/・ナガラッタールの豪邸群/・ブラフーマンの住居/・トイレと浴室
[「住」をめぐる最近の動き]
・住宅ブームの現出と都市の高級アパートブーム/・超高級指向と豪邸ブーム/・「住」をめぐる今後の課題
[着工式と新築祝い]
・棟上げの儀礼と邪視除けのまじない/・新築祝い/・キリスト教徒の場合
[台所とキッチン用品]
・インドの台所/・キッチン用品あれこれ
[家電製品]
・インド版「三種の神器」/・扇風機とエアコン/・掃除機とその他の家電製品
第6章 インド人と「美」
[化粧と美容]
[装身具と宝飾品]
[インド人と髪の毛]
第7章 インドの暮らし
[通過儀礼]
[婚礼と離婚]
[家事と接客]
[インド人と娯楽映画]
[「いのち」へのまなざし]
第8章 インドの産業と環境問題
[産業界の最新事情]
[水と環境問題]
[学校教育]
第9章 インドへの旅
[移動手段と交通事情]
[旅行と滞在時の心得]
[テレコミュニケーションの実情]