武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『西日本新聞の力作シリーズ「千年書房 九州の100冊」』のお勧め


 2006年から2年3ヶ月連載された推薦図書シリーズ、九州ゆかりの作家や作品からベスト100点を選び、次世代への熱いメーセージと共に語り伝えようとする好企画、九州人でなくとも十分に引きつける魅力的なシリーズ、とっくに完結してしまっているのだが有り難いことに今でも西日本新聞のサイトで読めるので、本好きには是非お勧めしたい。とても力のこもった推薦文がたくさん楽しめます。
 取り上げられている作品に好みの作品が多く、九州が文化創造の母体として、地域的な特性を持つ酵素のようなものを持っているのだろうか、タイトルを眺めるているだけでと、不思議な感慨がわき上がってきて、まだ読んでいない本もすでに読んだことのある本も、読んでみようかな気持ちが湧いてくる。間口の広さがなんとも嬉しいシリーズでもある。
 地方新聞社が、その地方性に力点を置いて、こういう力のこもったシリーズを展開するのは素晴らしい。以下にURLを引いておくので、是非覗きに行かれるようお勧めする。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/book/kyushu100/archives.shtml
 取り上げられた103作を以下に引用しておこう。ラインナップだけでも一覧してみてほしい。

五木寛之青春の門 筑豊篇」/尹東柱「空と風と星と詩」/原籙「私が殺した少女」
長谷川町子サザエさん」/辻仁成「白仏」/村田喜代子「百年佳約」
平野遼「地底の宮殿」/安永蕗子「青湖」/松本零士銀河鉄道999」
青来有一「聖水」/高樹のぶ子「銀河の雫」/川原一之「口伝 亜砒焼き谷」
夏樹静子「蒸発」/別冊・文学青年よ永遠に/久留島武彦「童話術講話」
目取真俊「水滴」/藤原新也「少年の港」/原田種夫「九州文壇日記」
徳富蘇峰「蘇峰自伝」/一ノ瀬泰造地雷を踏んだらサヨウナラ」/佐藤正午「永遠の1/2」
谷川雁「原点が存在する」/宮崎滔天「三十三年の夢」/長谷川法世博多っ子純情
別冊・作家の散歩道/帚木蓬生「三たびの海峡」/北方謙三「武王の門」
山之口貘山之口貘詩集」/ユージン・スミス アイリーン・スミス「水俣 MINAMATA」
劉寒吉「山河の賦」/ラフカディオ・ハーン「東の国から」/山田かん「記憶の固執
野田秀樹パンドラの鐘」/野田宇太郎「九州文学散歩」/中村地平「日向」 
別冊・火宅の世界/内田百輭「第一阿房列車」/滝口康彦「異聞浪人記」
内田春菊ファザーファッカー」/城山三郎「落日燃ゆ」/林房雄「繭」
中村汀女「汀女句集」/徳冨蘆花「灰燼」/大西巨人神聖喜劇
郭沫若「行路難」/石沢英太郎「羊歯行」/別冊・作家の家、書斎
梶原一騎巨人の星」/上野英信「追われゆく坑夫たち」/岩田豊雄「海軍」
安本末子「にあんちゃん」/那珂太郎「はかた」/森崎和江「からゆきさん」
与謝野鉄幹ほか「五足の靴」/国木田独歩源おぢ」/赤川次郎三毛猫ホームズ無人島」
永井隆長崎の鐘」/別冊・同人誌の力の源泉/種田山頭火山頭火日記」
山本作兵衛「王国と闇」/福永武彦「廃市」/宇能鴻一郎「鯨神」
火野葦平「花と龍」/横光利一旅愁」/海音寺潮五郎西郷隆盛
岡松和夫「志賀島」/栗林慧栗林慧全仕事」/武者小路実篤「君も僕も美しい」
別冊・作家の遺伝子/白石一郎「海狼伝」/杉田久女「杉田久女句集」
北原白秋「思ひ出」/森鴎外阿部一族」/野呂邦暢諫早菖蒲日記」
田中一村田中一村作品集」/柳田国男「後狩詞記」/岩下俊作「富島松五郎傳」
岩切章太郎無尽灯」/佐木隆三復讐するは我にあり」/別冊・複数の名前を持つ作家
檀一雄「リツ子・その愛 リツ子・その死」/福沢諭吉福翁自伝」/林京子祭りの場
松下竜一「砦に拠る」/萩尾望都トーマの心臓」/島比呂志「奇妙な国」
下村湖人次郎物語」/野上弥生子海神丸」/三戸サツエ「幸島のサル」
大城立裕「カクテル・パーティー」/別冊・挿絵の楽しみ/梅崎春生「幻化」
井上光晴「明日 1945年8月8日・長崎」/菊池寛恩讐の彼方に」/若山牧水若山牧水歌集」
丸山豊「月白の道」/宮崎康平まぼろしの邪馬台国」/宮本常一「忘れられた日本人」
島尾敏雄魚雷艇学生」/夏目漱石草枕」/五木寛之戒厳令の夜
別冊・装丁の楽しみ/石牟礼道子苦海浄土」/鹿児島県編「麑海魚譜」
夢野久作ドグラ・マグラ」/畑中純「まんだら屋の良太」/遠藤周作「沈黙」
椋鳩十「大造じいさんとガン」/林芙美子浮雲」/土門拳筑豊のこどもたち」
松本清張「点と線」/村上龍「69(シクスティナイン)」

 このシリーズそのものをまとめて1冊の本にする企画はないのだろうか、本になっていれば1冊座右に置きたいのだが。