武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 8月第3週に手にした本(15〜21)

*情けないことに書庫にあることを忘れて同じ本を買ったり、読んだことすら忘れて図書館に予約を入れたりするようになってきた。読んだり読みかけたりした本を備忘録としてメモ、週1で更新しています。(今週もたくさんの本を手にしたが全部読了できたわけではありません。)

谷川俊太郎著『夜のミッキー・マウス』(新潮文庫2006/7)*谷川俊太郎の詩集が、そのまま一冊の文庫になるのは珍しい。どうしてか気になって手にしたが、理由らしい理由は分からなかったけれど、100ページちょっとの詩集が、そっくり文庫で読めるのは嬉しい。こういう詩集の刊行をもっと望みたい。この詩集は、一冊のまとまりある詩集を意図して編まれた詩集ではなく、寄せ集め詩集である。
色川武大著『ばれてもともと』(文藝春秋1989/12)*著者没後に編まれたエッセイ他の短文集、色川武大という作家が好きな人向け。無頼派的な感性の数少ない生き残りとして愛読してきた1人。どの短文にも色川さんの感じ方が刻み込まれている。
桜庭一樹著『桜庭一樹読書日記』(東京創元社2007/7)*著者の2006年1年間の読書記録、Wevミステリーズに連載したものをまとめた一冊、ミステリーを中心に、執筆と読書に明け暮れる生活。活躍中の若い人のエネルギッシュな日常に目が回りそうになった。
筒井康隆著『新日本探偵社報告控』(集英社1988/4)*昭和20年代の後半、大阪の新日本探偵社を舞台に、探偵社の社内の人間模様と、作成した報告書で編み上げた、高度成長期前の物語。こういう設定を思いつくことも凄いが、1年もの連載を経て、完結した物語を仕上げた力量も凄い。本として体裁を整えた装丁もまた見事というほかない。どこから見ても実験作にして見事な傑作となっている。
◎上田秀人著『竜門の衛』(徳間文庫2001/4)*三田村元八郎シリーズの1作目、導入から展開への快調な筆の運びには脱帽、一気に物語世界へ連れ去られてしまう。著者改心の導入部であろう。時代小説なので人物の紹介や、事情の説明を欠かせない。その説明文の切れ味が良い、ここでもたもたすると読み続けるのが嫌になる。故池波正太郎の説明は見事だった、この著者も説明が上手い。上田秀人を初めて読む人には本書を薦めたい。
矢崎泰久編集発行『色川武大阿佐田哲也の特集』(別冊・話の特集1989/7)*副題<99人の友人達による別れのメッセージ>が、この本のすべてを語っている。99人の視点から語りかけられる故人の人柄は、まるで万華鏡のように華やかだが、惜しまれつつ亡くなったと言う事実を契機として、寂しくも悲しい像が、読み進むにつれて浮かび上がってくる。これほどの人に哀惜されるに相応しい存在感のある作家はそれほど多くはあるまい。
斎藤茂吉著『赤光』(新選名著復刻全集近代文学館1982/11)*基本的な物の見方感じ方、そして表現の仕方のお手本として、何度繰り返し手に取ってきた来たことだろう。その意味で私にとっての古典中の古典の一冊、大正2年10月発行の最初の版で手にするのはこれが初めて、これがBookoffの廉価本コーナーで入手できるなんて。