武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 早朝の公園散歩で楽しむ冬の花


武蔵野も12月の下旬になると、明け方の気温は零度近くまで下がり、外気に触れる素肌の部分は、刃物を当てられたように冷たく痛い。その代わり、遠くの富士山がクッキリ見えるほどに大気が透き通り、爽やかな清々しさはすこぶる気持ちいい。暗い内に起き出して、眠気を振り払い、身支度をして散歩に出る価値は充分にある。
今、航空公園では、サザンカロウバイの花が目を愉しませてくれる。特にロウバイは丁度綻び始めたばかり、濃厚な香りが早朝でもロウバイ園の辺り一面に立ち籠めている。風のない今朝のような日には、匂いのドームが出来ていて、そこに入ってゆくと全身が甘い香りに包まれて、身を切るような寒さでも妖しい気分の目覚めを誘われる。花の香りは、植物の生殖機能がかかわる匂いだからかもしれない。年が明けると本格的に開花するのだが、暮れの今頃の風情もなかなかのもの。
地面は一面に薄白く霜に覆われて、視線を上げると妖艶なサザンカや艶やかなロウバイが視界に入ってくる、色彩の対比としてはなかなかいい感じで、冬の数少ない眼の喜びである。