武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 4月第1〜2週に手にした本(28〜10)

*情けないことに書庫にあることを忘れて同じ本を買ったり、読んだことすら忘れて図書館に予約を入れたりするようになってきた。読んだり読みかけたりした本を備忘録としてメモ、週1で更新しています。(福島原発のことが気になって、あまり読書が進まず、2週分をまとめました(苦笑)。

あさのあつこ著『弥勒の月』(光文社2006/2)*あさのあつこは、男と男の意地がぶつかり合う話を得意とする、本書もそんな系列に加わる一冊。江戸時代だということは分かるが、何時の時代なのか最後まで分からなかった。と言うことは時代考証を重んずる歴史小説ではない、江戸の街並みを背景に借りたハードボイルドタッチの時代小説、上手い物語作りで一気に読ませる。続編を読みたくなった。
ジャレド・ダイアモンド著/倉骨彰訳『銃・病原体・鉄』(草思社2000/10)*上巻に続き、下巻の設問も非常に興味深い。人類史の課題をテーマ別に探っていくと、まだまだ書くことがいっぱいありそう。歴史好きの高校生にお勧めしたい。
◎高橋ますみ著『老いを楽しむ向老学』(学陽書房2003/4)*元気に老年期を過ごすための具体的なヒントが散りばめられたエッセイ集、フェミニズムに立脚しているので力みのない穏やかの提案に説得力を感じる好著。
茨木のり子著『茨木のり子全詩集』(花神社2010/10)*図書館から借りてきたが、返すのが惜しくなったので購入することに決めた。亡くなってから刊行された詩集「歳月」が哀切を極める名詩集。未発表の詩篇がたくさん収録されているのファンには嬉しい。<「スクラップブック」から>に収録されている雀詩篇を読んで嬉しくなり、茨木のり子さんが故人であることが改めて悲しくなった。
あさのあつこ著『夜叉桜』(光文社2007/9)*「弥勒の月」の続編、登場人物が同じ、同心木暮信次郎と岡っ引きの伊佐次に遠野屋の清之助の3人が軸になり、庶民のささやかな悲劇が展開する。謎解きの線は細いのでミステリィ的には薄味だが、ストーリィは淀みなく進むのでつい読まされてしまう。誰の心情でもない格言風の語り口が少し鼻につく。
◎河野仁昭著『天野忠さんの歩み』(編集工房ノア2010/3)*お気に入りの詩人、天野さんの随筆風評伝、丹念に京都における戦前からの足跡を辿っており、ファンには参考になる。
野呂邦暢著『諫早菖蒲日記』(文藝春秋1977/4)*幕末の九州諫早地方を舞台にした時代小説、15歳の少女を視点人物にしたことが、作品の瑞々しさの源、細部の緻密な書き込みがプロット主体の時代小説とはひと味違う余韻を残す。
西條八十著『西條八十全集第15巻』(国書刊行会2004/12)*著者の研究分野におけるライフワーク、ランボー論の大冊。作品論に重点を置いた力作評伝、多岐にわたる活動をしてきた著者の心の拠り所だったのだろう。
泡坂妻夫著『奇術探偵曾我佳城全集』(講談社2000/6)*マジックを得意とする作家、泡坂さんの面目躍如、手の込んだ連作短編が、マジックのネタのように目まぐるしいほどに趣向を変える。次はどの手で楽しませてくれるかとワクワク、短編好きなミステリィファンなら泣いて歓ぶだろう、職人芸である。