武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 4月第3週に手にした本(11〜17)

*情けないことに書庫にあることを忘れて同じ本を買ったり、読んだことすら忘れて図書館に予約を入れたりするようになってきた。読んだり読みかけたりした本を備忘録としてメモ、週1で更新しています。

堀田善衛著『堀田善衛全集第10巻―定家明月記私抄』(発行は1986/6新潮社刊)*この全編を著者はスペインのバルセロナ滞在中に執筆された。難解な明月記の記述に、異国の地にいて取り組んだことと関係するのか、本作の文体の自在な躍動感はとびっきり素晴らしい。このように日本語を駆使しきった随筆はなかなかお目にかかれない。古典文学随筆の傑作である。
瀬山士郎著『はじめての現代数学』(講談社現代新書1988/7)*数学教育に力をそそぐ珍しい数学者、啓蒙的な著作を多数手がける、本書はその啓蒙的な著作の初期作品。直感的な分かりやすさに意を砕いた明解な日本語がとても良い。すこし頭が良くなったような気がする数学啓蒙書の良書である。
野呂邦暢著『戦争文学試論』(芙蓉書房出版2002/8)<1977年版の新装改版>*著名な戦争文学以外の戦争体験記録を大量に掘り起こし、論評してゆく力作。15年戦争に対する日本人の関わり方の特異性が浮き彫りにされた見事な戦争文学評論。自衛隊入隊体験が、本書の背景を流れており、他の戦争文学論と趣を異にしている。
ヴィスワヴァ・シンボルスカ著/工藤幸雄訳『橋の上の人たち』(書肆山田1997/7)*ポーランドの詩人がポーランドの人々に向けてポーランド語で書いた傑作詩集。遠い異国の日本人の読者には、いささか距離があるフレーズがもどかしい。「可能性」と題されたチャーミングな自己紹介の詩が気に入った。この詩には何の隔たりも感じない。
野呂邦暢著『落城記』(文藝春秋1980/7)*「諫早菖蒲日記」が良かったので、同じ著者の次作の時代小説を手にした。幕末から安土桃山の戦国末期へ時代を移し、九州諫早地方を舞台にするのは同じ、城主の娘を視点人物にしたところは似ている。時代小説2作目で慣れたせいか、格段に読みやすくなっている。瑞々しさは薄らぎ、爽やかな凛々しさが出ている。
まど・みちお著『まど・みちお連作詩集全6巻』(銀河社1974/10〜75/4/10)*今週の記事で採り上げた。