武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 6月第1週に手にした本(30〜5)

*情けないことに書庫にあることを忘れて同じ本を買ったり、読んだことすら忘れて図書館に予約を入れたりするようになってきた。読んだり読みかけたりした本を備忘録としてメモ、週1で更新しています。(今週もたくさんの本を手にしたが全部読了できたわけではありません。)

◎P.J.デービス/R.ヘルシュ/芝垣和三雄・清水邦夫・田中裕訳『数学的経験』(森北出版1986/12)*こなれた翻訳とは言いかねる日本語だが、理解できない語句を一種の難解な象徴言語として読み進むと、気の遠くなるほど広大で深遠な現代の数学世界の俯瞰図が浮かび上がってくる。分からない部分を素通りしても先へ読み進む価値のある本、奇妙な褒め方になってしまったが、良い本だ。理解できなくても分かっておきたい世界というものがある、それが教養。
◎チェン・ニエン著/篠原成子・吉本晋一郎訳『上海の長い夜(上)(下) 』(原書房1988/7〜8)*図書館で上巻を借りて読んで気に入り、bookoffの廉価コーナーで改めて入手したもの。理不尽な権力の弾圧をはねのけた強靱でしなやかな1人の女性の精神が感動的。
◎上橋菜穗子著『獣の奏者―外伝/刹那』(講談社2010/9)*シリーズ最後の中編が2編、長編よりも文体の密度が濃く、展開が緻密で、情感に溢れ、大人の味わいだった。
◎ディヴィッド・デュバル著/横山一雄訳『ピアニストとのひととき(下) 』(ムジカノーヴァ1992/9)*上巻同様、著名なピアニストへのインタビューにワクワクする。生涯を音楽に捧げる人々の人生の一端が見えて、身が引き締まる。演奏を聴くこととは別種の感銘を覚える好著である。
森博嗣著『四季 春』(講談社ノベルス2003/9)*著者のS&Mシリーズに属する四季4部作シリーズの第1作目、魅力溢れるキャラクター、天才科学者<真賀田四季>の子ども時代に舞台を設定した軽いミステリィ。一人称の視点人物を、多重人格に仮構したお話なので、好き嫌いがはっきり出るかもしれない。
◎小出裕彰著『放射能汚染の現実を超えて』(北斗出版1992/1)*チェルノブイリ事故に関わった話を、3.11福島原発事故から3ヶ月後の今読むと、余りの怖さに背筋が寒くなり、無力感に苛まれてしまう。小出さんは20年以上前に、言うべきことをほとんど言い尽くしていた。震災が発生するまで聞く耳を持たなかったことが今さらながら恥ずかしい。
◎大木正興/大木正純著『室内楽名曲名盤100』(音楽之友社1983/8)*ハイドンからメシアンまでの室内楽の名曲を100曲選んで解説し、名演奏を紹介するガイド、聴き所を熱を込めて語る著者の言葉が読んでいて気持ちよい。解説が分かりよく、室内楽をライフワークにしてきた著者ならではの好著。