武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 6月第2週に手にした本(6〜12)

*情けないことに書庫にあることを忘れて同じ本を買ったり、読んだことすら忘れて図書館に予約を入れたりするようになってきた。読んだり読みかけたりした本を備忘録としてメモ、週1で更新しています。(今週もたくさんの本を手にしたが全部読了できたわけではありません。)

◎窪田空穂著/大岡信編『窪田空穂歌集』(岩波文庫2000/4)*本書の半分近い句が還暦を過ぎた昭和から戦後にかけての作品、その充ぶりが素晴らしい。表紙の解説にあるように<日本的情緒>に依存しない老境の表出に、目を瞠るような実存の断面が露出しており、思わず膝を叩きたくなる語句に度々突き当たる。傑出した老年文学と評して良いのではないか。大岡信の選択眼が優れているのだろう。
◎上橋菜穗子著『精霊の守り人』(偕成社1996/7)*同じ著者の「獣の奏者」シリーズが面白かったので本作に手を伸ばしてみた。女用心棒が主人公という意表を突いた設定なので、ストーリー展開に忙しいと言う印象、本好きな小学生高学年向きか。
◎上橋菜穗子著『闇の守り人』(偕成社1999/2)*シリーズの2巻目、主人公のルーツ探しの物語が動き出す。「獣の奏者」が成長物語だったのに対して、こちらの方は自分探しの筋立て、陰謀を軸とした歴史観に若干白けるが、お話は起伏に富みなかなか読ませる。長い物語のようなので先を期待しよう。
徳間書店蘇る野獣―大藪春彦の世界』(徳間書店1999/2)*大藪春彦への追悼特集に本人のエッセイや作品を組み合わせたもの、58年作の処女作「野獣死すべし」を久しぶりに読み返し、改めてその若々しい衝撃力に目を瞠った。青春の書である。
平井隆太郎著『乱歩の軌跡』(東京創元社2008/7)*乱歩の子息である著者が、有名な乱歩のスクラップブック<貼雑帖>を解読した労作、乱歩の几帳面さには脱帽する、繊細な人柄だったのだろう。乱歩ファン必携の書。
堀江あき子編『江戸川乱歩と少年探偵団』(河出書房新社2002/10)*少年探偵団シリーズを画像を軸にしてグラビア雑誌風にまとめたもの、雑誌発表当時の挿絵がふんだんに見られて懐かしい。「少年探偵手帖」に憧れた少年期を思い出した。
平井隆太郎監修/新保博久編『江戸川乱歩アルバム』(河出書房新社1994/10)*時系列で編まれた乱歩写真集、10年に一度ぐらい、無性に乱歩が懐かしくなる。この吸引力は何なのだろう。作品の向こう側の乱歩のアルバムが覗きたくなって手に取った。