武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 6月第3週に手にした本(13〜19)

*情けないことに書庫にあることを忘れて同じ本を買ったり、読んだことすら忘れて図書館に予約を入れたりするようになってきた。読んだり読みかけたりした本を備忘録としてメモ、週1で更新しています。(今週もたくさんの本を手にしたが全部読了できたわけではありません。)

清水昶著『天皇陛下の銀時計』(邑書林1995/5)*先月末に亡くなった40年生まれの詩人のエッセイ集、70年代の前半、言葉を触覚のように敏感に書き連ねた詩篇は、刺々しくて印象的だった。同世代の共感的に読んできた表現者がこうして消えて行くのは何とも寂しい。
週刊朝日臨時増刊『朝日ジャーナル/原発と人間』(朝日新聞出版2011/6)*福島原発事故を受けて発行された臨時増刊号、<朝日ジャーナル>を再び手にすることになるとは。脱原発派の勢揃い、若い人がいないのが侘びしい、これからの若者の問題なのに。事故から3ヶ月経過した今も事故が収束していない現実におびえながら読んだ。
朝日新聞学芸部編『きほんのき/プロが教える暮らしの知恵』(朝日文庫2003/4)*生活することに不器用なせいか、私は、この種の<生活の知恵>に弱い。新聞連載時も欠かさず読んだが、改めて今読むと全部忘れてしまっていたことに気がつき、全然身についていないことを痛感した。
高峰秀子著『わたしの渡世日記(上)(下) 』(朝日文庫1980/9)*沢山ある日本語で書かれた自叙伝の中でも指折りの名著、子役時代からの波乱に満ちた人生に目を瞠る。記述する日本語の表現力が凄い。女優として磨き抜いた表現力が、言葉にも乗り移っている。自分の来し方への振り返り方、切り取り方、距離の取り方が絶妙、傑作自叙伝である。
◎長谷川英一著『クルマ旅大全』(地球丸2011/3)*リタイア組、定年退職者をターゲットにした<車中泊>旅行のすすめ、読みやすくて思わず旅心を刺激される。宿泊地でのマナーと節度がしっかり書かれているところに好感が持てた。実際には、恥ずかしい旅人が後を絶たないためだろうか。
◎藤正巌著『キャンピングカーで悠々セカンドライフ』(文藝春秋2008/7)*この本はキャンピングカーを主題にした随想集のピカイチ、科学者らしい無駄のない文章に、言語表現への美意識を潜ませた、気持ちの良い好読み物、中高年からの生活の楽しみ方を、ゆっくりと手ほどきしてくれる。そっくり真似ることは難しいが、セカンドライフを愉しむヒントが至る所に散りばめられている高齢者向けの良書。
◎上橋菜穗子著『夢の守り人』(偕成社2000/6)*守り人シリーズの3作目、私的な感想だが、本作まで読んで遂に作者の文体が確立したな、という印象を受けた。文章だけではない。物語作者として、新たな次元に辿り着いたと言うか、物語の展開が格段に自然で巧みになった。シリーズとして読み続けていこうという気になってきた。