武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 7月第2〜3週に手にした本(11〜24)

*情けないことに書庫にあることを忘れて同じ本を買ったり、読んだことすら忘れて図書館に予約を入れたりするようになってきた。読んだり読みかけたりした本を備忘録としてメモ、週1で更新しています。 (この2週間は北欧旅行に行っていたので読む時間が少なかった)

◎池上晴夫著『適度な運動とは何か?―自分に合った運動の見つけ方』(ブルーバックス1988/8)*<スポーツは身体に悪い>という逆説を、文字通り逆説たらしめる、健康のための運動啓蒙書。具体的で分かりやすい運動処方の良書である。
◎上田秀人著『無影剣』(徳間文庫2002/12)*三田村元八郎シリーズの3作目、海外旅行の機内や宿泊先のホテルでの無為の時間に読んだ。面白時代小説は、外国旅行の友としては最適な読み物だろう。伝奇小説に近い錯綜するプロットが本書の読ませどころ。
アリステア・マクラウド著/中野恵津子訳『彼方なる歌に耳を澄ませよ』(新潮社2005/2)*スコットランド系カナダ人の過酷な移民の歴史を背負った一族の物語、語り口に独特の渋いコクがあり、短編の名手が書き上げた傑作長編。本当に書きたいことだけを言葉に刻んだ物語、幾重にも積み重なる一族の来歴の奥行きが主人公の存在感に繋がり、生きることの手触りとなって伝わって来る。
◎藤正巌/古川俊之著『ウェルカム・人口減少社会』(文春文庫2000/10)*この国の高齢社会化と少子化社会化を見据えた軽い感じのする社会論。データに基づくシミュレーションのより、情緒的に不安感を煽る類の予測情報とは一線を画そうとしている理科系研究者による社会論。年金制度の崩壊の必然性を説くあたり、かなり苦い未来予測ではあるが説得力がある。
ヘルマン・ブロッホ著/川村二郎訳『ウェルギリウスの死』(新潮社1966/5)*古代ローマにおける最高の詩人の最晩年の死にいたる僅か18時間を、重層的かつ克明に描き上げた前衛的な現代小説。作品として完成できたことも奇跡的なら、日本語に翻訳され得たことも奇跡的と言いたくなるような、最高に難解な老人小説。古代ローマ世界の壮麗さに、言葉で接近しようと試みた壮大な言語構築物。