武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 7月第4週に手にした本(25〜31)

*情けないことに書庫にあることを忘れて同じ本を買ったり、読んだことすら忘れて図書館に予約を入れたりするようになってきた。読んだり読みかけたりした本を備忘録としてメモ、週1で更新しています。(今週もたくさんの本を手にしたが全部読了できたわけではありません。)

◎フィールドアイ著『フィールド写真入門』(ブルーバックス1985/3)*野生動物、昆虫、植物、野鳥などの写真をいかにして撮るかを優しく手ほどきした写真入門。技術的なことを丁寧に取りあげ、具体的な動植物を具体例にして記述してあるので分かりやすい。デジカメ以前の古い本だが基本は変わらないということか。
岡田暁生著『オペラの運命/十九世紀を魅了した「一夜の夢」 』(中公新書2001/4)*この著者の西洋音楽史はいつも視点が斬新、記述がドラマチックで読んでいて、ワクワクしながらお色直ししたような音楽史を愉しませてくれる。本書は、大きな枠組みでオペラの誕生から終焉(?)までの流れを、鮮やかに描き出している。随所にばらまかれた警句的表現が刺激的、西洋古典演劇に比べて、ご都合主義的な筋立てのために見ていて楽しいのだが、どこか白ける気持ちが払拭出来なかった理由がストンと納得できた。
米原万里著『米原万里の「愛の法則」 』(集英社新書2007/8)*米原万里さんのエッセイや創作が大好きだったが、もう新作が読めないというのは何とも寂しい。本書は、故米原さんの唯一の講演集、四本が収録されている。米原さんのエッセイの中でも、仕事の同時通訳関連のものが特に生彩に富み、読み応えのあるものが多かった。本書でも、二本が通訳関連、切り口の鮮やかさと組み立て方の巧妙さに舌を巻いた。惜しい人を亡くした。
◎村岡恵理著『アンのゆりかご/村岡花子の生涯』(マガジンハウス2008/6)*村岡花子の孫による花子の伝記。1893(明治26)年生まれの花子の、この国の近代を逞しく情熱的に生き抜く姿が凛々しく描けており、アンの愛読者でなくとも興味深く読める。読みやすく澄明な文体と、巧みな場面転換など、筆者の表現力が素晴らしい。受け継がれた花子の遺伝子だろうか。
岸田衿子著『あかるい日の歌』(青土社1979/1)*「ソナチネの木」四行詩、「あかるい日の歌」、「風の伝説」、「風とかざぐるま」など4部に分かれた厚みのある詩集、「あかるい日の歌」の詩篇に気に入ったものが多かった。「風の伝説」に納められた物語性を滲ませた詩篇も力作揃い、力のこもった詩集である。
辻邦生著『微光の道』(新潮社2001/4)*99年に亡くなるまでの90年代の晩年の随筆をまとめたエッセイ集、2部と3部に集められた読書を巡るエッセイに、印象的なものが多かった。渾身の長編大作が多い小説作品に比べて、晩年の軽い感じのエッセイは読みやすく、かえって心に残る作品が多いのは不思議である。