武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 8月第1週に手にした本(30〜5)

*情けないことに書庫にあることを忘れて同じ本を買ったり、読んだことすら忘れて図書館に予約を入れたりするようになってきた。読んだり読みかけたりした本を備忘録としてメモ、週1で更新しています。(今週もたくさんの本を手にしたが全部読了できたわけではありません。

渋沢孝輔著『不意の微風』(晶文社1966/10)*半世紀以上前に、都内の新刊書店で目にして、ページから吹いてくる律動感のある言葉に惹かれて購入、今なお手元に残る著者の最高傑作詩集、最後に置かれた散文詩「韻律の夜明け」が、本書の解説の役割を果たして、見事な締めくくりとなっている。この詩集だけは、本書の本文レイアウトで読むのがベスト、2段組の全集などで読むと印象がガラリと変わってしまい味気ない。詩人の青年期を総括する稀に見る熱気ある詩集である。
窪田般弥編訳/藤富保男絵『なげきぶし風の墓碑銘』(書肆山田1981/11)*世界のライト・ヴァースの2巻目、フランス編。軽妙洒脱な諷刺詩なら本家本元の期待通り、小粋な小品が小気味よく並んでいる。
◎E・F・シューマッハ著/伊藤拓一訳/長州一二監修『宴のあとの経済学』(ちくま学芸文庫2011/9)*石油ショック以前の戦後世界経済を、<宴>の経済と呼び、宴の後の低成長時代に最適な経済モデルを模索する倫理観あふれる経済学。脱原発へのヒントがほしくて本書を手にした。納得できる指摘が散りばめられている。多くの人に勧めたい。
米原万里著『打ちのめされるようなすごい本』(文藝春秋2006/10)*第1部が週刊文春に連載された「読書日記」、第2部が多様な活字メディアに掲載された書評がまとめられている。読書日記の終わり近く、自らの体験と実感をもとにした癌治療本の検証が鬼気迫る。良い本と出会った時の著者の歓びに満ちた躍動する文体が楽しい。遊び心溢れる推薦の仕方に著者の人柄が滲んでいるような気がした。惜しい才人を亡くした。