武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 10月第4週に手にした本(24〜30)

*情けないことに書庫にあることを忘れて同じ本を買ったり、読んだことすら忘れて図書館に予約を入れたりするようになってきた。読んだり読みかけたりした本を備忘録としてメモ、週1で更新しています。(今週もたくさんの本を手にしたが全部読了できたわけではありません。)

肥田舜太郎/鎌仲ひとみ共著『内部被曝の脅威−原爆から劣化ウラン弾まで』(ちくま新書2005/6)*第3章に内部被曝のメカニズムについての分かりやすい説明がある、福島第1原発事故の深刻な放射能汚染について考えるヒントがいっぱい。喫煙と発癌の因果関係のように、現段階では疫学調査でしか立証できない関係かもしれないが、内部被曝問題は核廃絶の最大の根拠となることがよくわかる。内部被爆問題は核の未来を決める最大の鍵となるだろう。ヒロシマナガサキ・フクシマが同一の問題枠で括られることに愕然とする。
◎セイヤー著/エリオット・フォーブス校訂/大築邦雄訳『ベートーヴェンの生涯<下>』(音楽之友社1974/2)*1815年ベートーヴェン45歳から27年56歳で亡くなるまでの晩年を1年区切りに描き出した詳細な実証的伝記、あまりに大部なので読み物と読むのは辛い。後期のピアノソナタ弦楽四重奏曲などに惹かれるファンが創作の背景を探りたいときに繙く本、かなり専門的。
◎Anton Felix Schindler/シンドラー著『ベートーヴェンの生涯』(角川文庫1954/11)*著者は、ベートーヴェンの晩年に身の回りの世話をした秘書役の人物だが、その後の研究で、この伝記は誇張と虚構に満ちていると厳しく批判されている問題作。あまりにも曰く付きの本なので、今後再出版されることもないだろう。その気になって読むと至る所にベートーヴェンを戯画化する記述がでてくるので、ギャグとして読むと愉しめるかもしれないが、お勧めはしない。wikipediaでは「ベートーヴェン研究における最大の汚点」と酷評されているが致し方ないだろう。勇み足的なベートーヴェンのプロデューサとの見方もあるが、少し無理があるような気がする。「全ての書かれた歴史は捏造である」とまで割り切っている方にならお勧めできるかもしれない。
宇野功芳著『宇野功芳の「クラシックの聴き方」』(音楽之友社2009/7)*音楽雑誌に連載された記事を寄せ集めたクラシック随想集に聞き書きと対談をプラスした個性的な雑文集、癖の強い宇野さんの音楽観が受け入れられる人なら、まだまだお元気な音楽放談をたっぷり愉しめる、クラシック初心者には癖が強すぎる。