武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 朝のワンプレート(22)

 《配膳前の作り置き》
 今は亡き理論家肌の料理研究家丸元淑生さんが『システム料理学』の中で、「丸腰で台所に立つな」との名言を吐いていたのを思い出した。腹が減ってから台所に行くようでは手遅れということ、事前の準備が大事という教訓である。これ以外は、面倒な話が多く、家庭料理に取り入れ辛い提案ばかりで、わが家の実践に結びつくことはあまりなかった。彼は、実際に食べていた日常の食卓はなぜか公開していない、大事なのは、そこのはずなのに。
 献立の公開で思い出すのは、名女優沢村貞子さんの『わたしの献立日記』、心のこもった繊細で見事な献立に吃驚、一気に女優としてだけでなく人としての沢村貞子のファンになってしまったことだった。沢村さんは銀幕での渋い演技もさることながら随筆の文章も素晴らしかった。
 わが家の朝食に関して言うと、朝、コンロに点火して作るものは通常、味噌汁とプレーンオムレツの2品だけである。冷蔵庫に保存してある作り置きをワンプレートに盛りつけながら、まず味噌汁を作り、もう一つのコンロでオムレツを作る。すべてを同時進行ですすめる。タイマーで測ってみると作業開始から終了までいつも30分以内、それ以上時間をかけることはない。ご飯は昨晩炊いたもの。
 注文すると直ぐに出てくるファストフードのようにはゆかないが、プレートに乗っている品数にしては、短時間で出来あがっている方ではないか。
 それには理由がある。常備菜は、時間がある時に、気分転換に作ることにしている。同時に2品以上は作らないので、そんなに手間はかからない。温野菜と茹で野菜は、買ってきて家に着いたら直ぐに湯を沸かし、圧力鍋をコンロに乗せ、電子レンジの助けも借りて、一気に下ごしらえを済ませてしまう。これ以上に鮮度を生かす調理法は思いつかない。
 出来た食材はすべて、水冷と空冷(2枚の団扇でせっせと扇ぐだけ(笑)で短時間に冷やし水を切り、買い置きの保存容器にいれて冷蔵室にしまい込む。冷凍はしない。食べきるのに2〜3日以上かけない。味付けが済んでいる保存のきく常備菜も1週間以内に食べきってしまう。
 冷蔵庫に空きが増えたら、次の買い出し日が近付いたサイン、献立もメニューもレシピもない循環式の食生活なので、お店で手頃な値段で出ている季節の野菜とタンパク質を適当に買ってくるだけである。
 出来るだけ簡略化して自動化することが、システム化の要諦なので、可成りの程度、わが家の食事はシステム化が進んでいると言えるのではないか。簡単でほどほどに美味しくて体調も良いので、このやり方は当分続きそうである。



 前置きはこれくらいにして、朝の献立を紹介してゆこう。この日の朝コンロを使った品は赤。

5月某日の朝食(上) ・味噌汁(青のり、油揚げ、千切りダイコン)・ご飯・三つ葉のおひたし・ニンジン温野菜・京菜のおひたし・蕗の旨煮・春菊のおひたし・トマト・ブロッコリーの温野菜・レンコンのきんぴら・花山葵の浅漬け・豆鰺の南蛮漬け・画像にはないがコーヒー入りホット牛乳


5月某日の朝食(下) ・味噌汁(青のり、油揚げ、千切りダイコン)・ご飯・春菊のおひたし・トマト・京菜のおひたし・カボチャの温野菜・ブロッコリーの温野菜・レンコンのきんぴら・花山葵の浅漬け・蕗の旨煮・プレーンオムレツ・画像にはないがコーヒー入りホット牛乳