武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 5月第3週に手にした本(14〜20)

*情けないことに書庫にあることを忘れて同じ本を買ったり、読んだことすら忘れて図書館に予約を入れたりするようになってきた。読んだり読みかけたりした本を備忘録としてメモ、週1で更新しています。(今週もたくさんの本を手にしたが全部読了できたわけではありません。
宮脇俊三著『インド鉄道紀行』(角川文庫1993/3)*この著者の本はクセになる。ブックオフの廉価コーナーで見つけ、未読だったので手にした。文章に淀みがなく明解で、関心事は鉄道だけに特化しているので安心して読める。マニアの眼の凄さが随所に散りばめられており、他の紀行ものにはない発見がある。1冊読むと続けて何冊か必ず読みたくなる不思議な魅力を持つ著者である。異色のインド入門としてお勧め、書いてあることはとても正確である。
◎相賀徹夫編著『中国料理大全/総合調理編』(小学館1986/5)*中国料理大全、北京料理、江南料理、広東料理四川料理の4巻のまとめとして、料理法や素材、調味料や香辛料などをまとめた中国料理概論、ふんだんに画像を配した詳細な説明は、ページによっては気味が悪くなるほど多彩、日本料理が及ぶべくもないその広がりと奥深さに圧倒される。発行当時2万円もした本が、美品でも1割以下で手に入るのはうれしい。
農山漁村文化協会編集部編『日本の食事事典1.2』(農文協1993/2)*全48巻の「日本の食生活全集」の総合索引、この本を読む楽しみはレビューに書いたのでそちらを。
高原英理著『少女領域』(国書刊行会1999/10)*11作の文学作品を手掛かりに少女的視座を縦横に論じた文学エッセイ集。女性の生涯のうちで最も曖昧で捕らえにくい側面をもつ少女期を対象化しようとした奇特な本、あるいは既に対象化されている文学作品を脱構築して少女期をとらえ返そうとしたユニークな試み。著者の繊細かつ慎重な文体が面白い。
夏石鈴子著『いらっしゃいませ』(朝日新聞社2003/4)*出版社につとめる若きOLのリアルな心象風景を綴った、鮮度の良いオフィス小説。あらゆる出来事を鋭くシニカルにとらえて、自分の世界を構築してゆく表現力が素晴らしい。視点人物<みのり>の三人称でありながら一人称的な記述が面白かった。
夏石鈴子著『新解さんの読み方』(角川文庫2003/11)*赤瀬川さんに新明解の面白さを教えた人が著者の夏石さんと知って、遅ればせながら手にした。実は私も、昔から新明解が変な国語辞典と気付いていて、職場の仲間などに吹聴していたのだが、誰にも分かってもらえず、諦めてしまっていたのである。興味がわいて手に入るだけの国語辞典を比較していて、新明解の特異さに気がついた。でもそれを面白がって一冊の本にしようなどとは思いもしなかった。この本の著者のコメントを合わせて読むととても面白い。