武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 6月第3週に手にした本(18〜24)

*情けないことに書庫にあることを忘れて同じ本を買ったり、読んだことすら忘れて図書館に予約を入れたりするようになってきた。読んだり読みかけたりした本を備忘録としてメモ、週1で更新しています。(今週もたくさんの本を手にしたが全部読了できたわけではありません。
◎プーリモ・レーヴィ著/竹山博英訳『休戦』(朝日新聞社1998/8)*プリモ・レーヴィの「これが人間か」に続く第2作目のナチ強制収容所もの、前作はいかにしてアウシュビッツで生き残ったかの記録だったが、今度は、いかにして人間世界に帰り着いたかの彷徨の記録。当時はヨーロッパ全域が焼跡闇市だらけだったのだ。出会う人の人物を見抜くことが、生き残るために欠かせなかったのだろう、人間観察と人物描写が鋭くなり、文芸作品としての完成度はこちらの方が上、レーヴィにとって書くことが自己回復と生き延びるための手段になってきたことが分かり、記述から目が離せない。イタリア人らしい諧謔精神の発露に にんまりさせられる。
◎中西恵著『ワインと外交』(新潮新書2007/2)*この著者のワインと晩餐会の食卓にかかわる知識にはいつも脱帽するのみ、現代国際外交の世界におけるワインの役割について、これほどリアルに語ることのできるジャーナリストは他にはいない。庶民には無縁の世界ではあるが、読み物として面白く、知らないことだらけで、感心するしかない絢爛たる外交の裏話。「エリゼ宮の食卓」の続編となる名著である。
◎本山萩舟著『随筆的/飲食日本史』(青蛙房1956/9)*この著者が「飲食事典」を執筆する過程で生まれた副産物のような、やや軽い随筆集、60編の食文化史的な随筆が古代から近代まで、テーマにそって並んでいる。事典的な記述からは省かざるを得なかった著者の食の蘊蓄が伸びやかに語られており文体はのびやか。
◎立ち飲み研究会編『立ち飲み屋』(創森社1999/5)*若い頃、職場の酒好きな同僚に誘われて何度か立ち飲み屋なるものに立ち寄ったことがあったのを思い出して、スペインのバルと雰囲気が似ていたことなどから、興味が湧いてきたので手にした。都内各所にある60数件の立ち飲み屋印象報告。全編に流れる<立ち飲みの流儀>を重んじる姿勢が、酒飲みのモラリストらしくて好感が持てた。
◎加藤邦彦著『老化探求/ヒトは120歳まで生きられる』(読売科学選書1987/10)*生き物にはさけられない老化という現象について、どこまで科学では迫ってきているか知りたくなって手にした。老化がどのように捉えられているか、よく分かるように情報量にはなかなかのものがあるけれど、だからどうすればいいかという話ではなかった 基礎科学の実用化は難しい(笑)。
横溝正史著『横溝正史』(東京創元社1986/1)*この(戦前派)日本探偵小説全集は何冊も手にしている、本書も傑作「鬼火」に竹中英太郎の印象的な挿し絵を収録して、検閲以前の初期の雰囲気をよく伝えている。古い物にもなかなか良い物があり 読み出すと止まらなくなる。横溝流の物語の筋立てが いかにもドロドロしていて堪らない。