武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 7月第4週に手にした本(23〜29)

*情けないことに書庫にあることを忘れて同じ本を買ったり、読んだことすら忘れて図書館に予約を入れたりするようになってきた。読んだり読みかけたりした本を備忘録としてメモ、週1で更新しています。(今週もたくさんの本を手にしたが全部読了できたわけではありません。

◎『中央公論文芸特集』(中央公論社/昭和26年9月号)*堀田善衛芥川賞受賞作、「広場の孤独」が初めて全文掲載された当時の感触が知りたくて手にした。朝鮮戦争が始まり、戦後世界に東西の緊張が高まり、大人達が再び戦争の恐怖におびえはじめた頃、堀田の作品がいかに周辺の文学者から隔たった問題作だったか、本誌を手にして実感できた。60年以上前の雑誌は小さなタイムマシンのようだ。なお、広場の孤独のカットは、かの岡本太郎画伯だった。
◎今村太平著『映画芸術』(創元文庫1953/3)*今村太平の唯一の文庫化された映画評論ではないか、第一部が現代芸術と映画、第二部が日本芸術と映画、映画を軸にしてあらゆる分野の芸術表現と映画との関連を、連想の赴くままに論じたエッセイ集。著者の関心分野の広がりと、着想の斬新さは、今読んでもなかなか面白い。
◎杉山平一著『今村太平/孤高独創の映像評論家』(リブロポート1990/11)*今村と付き合いの長かった著者による力作評伝、個性の強い映像評論家今村の実像に迫りたくて本書を手にした。今村への敬愛の念が色濃く、アカデミズムに呪縛されない在野の映像理論家の長短併せ持つ実像がよく捉えられている。
柳瀬尚紀編訳/古川タク絵『ゆうべ女房をころしてしもうた』(書肆山田1982/6)*世界のライト・ヴァースシリーズの1、イギリス・アメリカからの傑作選とある。単なる思いつきのような作品もあるし、きつすぎる冗談のようなのもあり、もっと読みたかった気がする。