武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 9月第2週に手にした本(10〜16)

*局地的に短時間 僅かのお湿りが降っても湿度が上がるばかりで 残暑は居座ったように続いていて堪らない。8月なら我慢も出来るが 9月中旬になって真夏日が続くと我慢の限度を超えてしまう。思い切って友人のセカンドハウスを訪問したら、さすが田舎の朝晩はけっこう涼しかった。自然の温度調節機能がいかに凄いか 改めて実感しました。

エドガ・A・ポオ著/吉田精一訳『マルジナリア』(創元社1948/3)*今はない中学校時代の図書館でこの切れ味鋭いポオの覚書に触れて以来、半世紀以上が過ぎた。昼休みに生じるふとした空白の時間帯に、図書館でこの短文集をめくるのは反抗期の頃の、ひねくれた愉しみだった。渋沢龍彦の著作に同じ書名を見つけた時の驚きと親近感が懐かしい。短文に触発されて紙の世界に遊ぶのはいつまで経っても愉しい。(右の画像は今回手にしたもの、下の画像はネットでみつけた戦前の最初に世に出た版)

池内紀編訳/高岸昇 絵『魔女様御/優待乗車賃無料』(書肆山田1982/3)*世界のライトヴァース3巻目、ドイツ篇、訳者が言うには、軽妙なライトヴァースは翻訳不可能とあるが、この巻はあまり心愉しまなかった。原作のせいなのか、翻訳のせいなのか、分からない。

岩波書店編集部編『近代日本総合年表第三版』(岩波書店1991/2)*幕末以降の歴史読み物をひもとく際に手元に置いて使いたくて入手した。政治、経済等、社会、学術等、芸術、国外の6部門並列のスタイルが、歴史の視野を広角化してくれる歴史年表の労作。少々高価だがこういうリファレンス機能の高い書物は手元に置いておくことにこそ意義がある。山田風太郎をかつてどんなによろこばせたか、思い出した。彼の明治小説に刺激を与えたに違いない。

金子光晴著『金子光晴全集第2巻)』(中央公論社1975/10)*力作の1部、蛾や 2部、薔薇などよりも、3部の家族をテーマにした「三人」の連作が心にしみる。