武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 9月第4週に手にした本(24〜30)

*長かった残暑がようやく終わって、秋の雨がザッと降り、一雨毎に地面の熱が冷めてゆく。今週で9月が終わり、一年で一番過ごしやすい10月がくる。熱だれを起こしていた持ち前の好奇心がやっと動き出すかもしれない。地球温暖化のせいか、夏が耐え難い年が増えたような気がする。来年は少し対策を考えよう。

椎名誠/編集人『本の雑誌92年分12冊』(本の雑誌社1992/1〜12)*オークションでまとめて格安で出ていたので、思い切って入手、古雑誌をまとめ読みするのはこれが初めて、情報としては古いが雑誌の雰囲気が好きなので引き込まれるようにして愉しい時を過ごした。随所に覗く遊び感覚の不意打ちも愉しい、困ったことに読みたい本がまた増えてしまう。本屋で立ち読みする程度で、私はこの雑誌の良い読者ではなかったけれど、周りに本好きがいない地方などでは、この雑誌の雰囲気は得難い貴重なものだろう。

◎嶋岡晨/大野順一/小川和弘佑編『戦後詩大系1』(三一書房1970/9)*戦後25年間に旺盛な創作活動を繰り広げた詩人たちを、出来るだけ広く偏りなく掬い上げようとの方針で編まれた戦後詩事典とでも言えばいいか。この巻には頭文字がア〜オまでの詩人のものが収録されている。知っていたり読んだことがあったりする詩人や詩が何時の間にか偏ってしまったような気がしたので本書を手にした。やはり初めて目にする詩人や作品が相当多い、少しずつ愉しむことにしている。

逢坂剛著『書物の旅』(講談社文庫1998/12)*折に触れて著者が書いてきたエッセイや解説文の中から読書や書物、情報収集などに関するものを集めたもの、やや偏りのある著者の読書傾向が、ハードボイルド作家らしく好感が持てる。

宮本昌孝著『夕立太平記』(講談社1996/7)*この著者の本は何を読んでも、爽快な読後感が残るので、読んで損な気がしたことは一度もない。本書も、野性的な青年を主人公にした波乱に満ちた成長物語。どこか山手樹一郎のようなほのぼのとしたところもあるが、ラブストーリーが苦手らしく代わりと言って何だが活劇シーンに力を入れているの頼もしいけれど、安易に人が殺されすぎるので本作は少し安っぽい印象は否めない。

久世光彦著『ニホンゴ キトク』(講談社1996/5)*週刊現代に連載された言葉にまつわるエッセイをまとめたもの、日本語に対する繊細な感覚が随所に光っていて、なるほどと共感するところが多い。読んだ本や心に残る思い出などで編み上げたオーソドックスな随想録。