武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 2月第3週に手にした本(18〜24)

*なかなか暖かくならないので、痺れを切らして数日間、伊豆の温泉に行ってきた。持ち物は少しの着替えと読みかけの本数冊とキンドル。部屋に閉じこもり、温泉につかったり本を読んだり、他には一切何もしないで三泊四日。帰りに地元の新鮮な野菜を買ってきた。数カ所で濃厚なアロエの花を見かけた、伊豆が温暖なせいだろう。

ジャック・ケッチャム著/金子浩訳『隣の家の少女』(扶桑社ミステリーKindl版)*キングのスタンド・バイ・ミーを彷彿とさせる青春残酷恐怖小説、数名の心優しき登場人物と、過酷なまでに残酷な隣人たちの、人格崩壊の物語。僅かに救いらしきものはあるのだが、読んでいる時も後味も相当に苦い。サイコ・ホラーとでも呼べばいいか。

ケン・フォレット著/戸田裕之訳『大聖堂/果てしなき世界(上) 』(ソフトバンク文庫2009/3)*新潮文庫から出ていたベストセラー大聖堂の続編、大聖堂の建設を軸にした波瀾万丈の長編歴史小説。この作者は女性の描き方がうまく、人物相互の葛藤を複雑に絡ませて、スペクタクルシーンで筋を増幅させながら、次から次へとドラマを盛り上げてゆく手腕が素晴らしい。この巻は廉価コーナーで手にしたのだけれど、すぐに続きを注文してしまった。

立花隆著『天皇と東大/大日本帝国の生と死(上) 』(文藝春秋2005/12)*東大という教育システムと天皇制という統治システムの2本を軸にして、この国の近現代史を捉え返すという壮大な歴史ドキュメント。ほとんどのデータが一次資料を基にして書かれているので、圧倒的な説得力があり、とても面白い。国をあげての右傾化傾向にむけて、著者がこのテーマにのめり込んだ理由が何となく分かる気がする。

色川大吉著『ある昭和史/自分史の試み』(中公文庫1978/8)*こちらのほうは著者の個人史と昭和史を絡めて、昭和史を庶民の視点から描き出そうとした実験的な昭和50年史の試み。随所で著者の個人的な心情が滲みでていて、ホットな感じのする記述になっている。こういう昭和史もあっていい。