武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 2月第4週に手にした本(25〜3)

*久しぶりにちょっとした風邪をひいた。急激な気温の変化にうまく対応しきれなかったためだろう。半日、止めどもなく鼻水が出て、何をしても止まらず、仕方がないのでマスクをして、鼻の下にティッシュを当てて、吸い取り紙のようにして耐えた。暖かくして一晩寝たら治ったので、単なる風邪の初期症状だったのだろう。本を読んでいると、雨だれのように鼻水が滴って慌てた、油断大敵(苦笑)。

東海林さだお著『東海林さだおのフルコース/丸かじり傑作選』(朝日文庫2001/1)*週刊朝に長期連載の「丸かじり」が単行本になり、その10巻から16巻までから抜粋した傑作選。これほど多様な角度から、食べ物を捉え直して限りなくユーモラスで愉しい文章を綴れる人は他にいない。恐るべき才能と言う他ない。イッキ読みするよりも少しずつ惜しみつつ読み進めてじっくり愉しむといい。

ケン・フォレット著/戸田裕之訳『大聖堂/果てしなき世界(中) 』(ソフトバンク文庫2009/3)*建築職人と羊毛商人の二人の男女の主人公の人物像が、中世世界の中で、少し時代を超越しすぎている気がしないでもないが、複雑に組み合わされたストーリー展開は、小気味いいほどに展開が早く、ついつい先を読まされてしまう。物語の醍醐味を堪能している。

辻邦生編『地図を夢みる/楽しみと冒険(1) 』(文藝春秋1979/11)*随筆とエッセイのアンソロジー楽しみと冒険シリーズの1巻目、地図と旅に関わる傑作エッセイの選りすぐり。四章に分けられた編集の仕方も面白いが、後ろに付いている(人生案内ふうな)と付記された索引の遊び心が秀逸。アンソロジーが生み出す最高に贅沢な時間を堪能できる。

◎アルベルト・マングェル著/原田範行訳『読書の歴史/あるいは読者の歴史』(柏書房1999/9)*読書に関する10章と読者の関する10章によって構成された多角的読書論。留まるところを知らないかのような著者の博識に圧倒され、文体のペダントリーに目眩がするほどだが、記述の骨格になっているのは、著者自身の私的な体験と感性なので、密度は感じるが散漫ではない。翻訳の日本語が大変に解りやすい名訳。これを読むと書物の世界が一気に深まり広がる気がする。