武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 7月第1〜2週に手にした本(1〜14)

*7月になったばかりなのに、すぐに梅雨あけとなっていまい、猛烈な湿度と暑さに体がついてゆけなくて、ぐったりしている。武蔵野では、大気が不安定なのか、午後になると雨雲が湧き起こり、雷鳴がとどろき夕立がたたきつけるように降ってくる。午後の外出は油断ならない。1時間足らずの土砂降りでも、びしょぬれになってしまう。雑木林では、気の早いニイニイゼミが鳴きだした。調べてみたら群馬県ではレッドデータブックの注目指定を受けている、減ってきたのかな。エアコンのない書庫の一角にいることの多い読書虫には最も過酷な季節(汗)。

◎ピエール・ガスカール著/佐藤和生訳『人間と動物』(人文書院1978/8)*初期の短編の頃から、動物たちに注がれる著者の感受性は鋭敏だった。それが人間と動物の関係を歴史的にたどりながら、通史的な文化史エッセイとなってまとめられている。苦味を伴った鋭利な考察は、時空を超えた広がりと深さを湛えて知的な興奮を呼び覚ます。少しずつ読みすすめてゆこう。

◎ピエール・ガスカール著/佐道直身訳『緑の思考』(八坂書房1995/9)*パリの自然史博物館の植物標本室における瞑想で幕が開き、絶滅しつつある植物への思いと、古代からの人間と植物との係わり合いなど、幅広い事柄に思いを届かせた、滅びゆく植物への愛着に彩られたエッセイ集。

◎落合真司著『中島みゆきデータブック/20年の光と影』(青弓社1995/9)*歌手中島みゆきの詳細な年譜、みゆきフリークがこれまで収集してきた資料を整理して、コメントを加えながらそれだけで一冊の本を作ったといった体裁である。熱烈なファンの時折現れる距離感のなさと、評論家的な記述が混在していて面白い。

◎ジェフ・アボット著/佐藤耕士訳『図書館の死体』(ハヤカワ文庫1997/3)*あえて分類するならユーモアミステリィ、田舎町の図書館長をつとめる主人公の、親しみやすい諧謔的な語り口が、図書館に集う町の人々の生活を浮かび上がらせつつ、人生の奥深い影を抉る。読み味がいいので、シリーズになったのも頷ける。

都筑道夫著『退職刑事1』(創元推理文庫2002/9)*定年退職した元敏腕刑事とその息子の現役刑事が、日常的な家庭の団欒風景の中で、捜査にゆき詰まっている難事件の犯人を、親子の会話の中だけで解き明かして見せるという、典型的な安楽椅子探偵物、全6巻まで続いた人気シリーズの1巻目。クールでモダンな語り口が魅力、個人的にはミステリィ界の星新一と位置づけてみたい。