武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 新たな生活空間の構築(3)


 山荘購入の契約からほぼ1ヶ月、土地と建物の登記もすべて完了、家屋に出入り可能な鍵をすべて新規のものに交換して、最低限のセキュリティーを整えた。周辺の様子も少しずつ分かってきた。
 先日、それまで日帰りパターンだった山荘行きを、宿泊モードに切り替えた。近くの日帰り温泉で入浴と夕飯をすませ、好きなところに寝袋を広げキャンプのような泊まり方をしてみた。


 日が暮れるとあたりは見事に真っ暗、遠くに小さくご近所の明かりが見えるだけ、直ぐそばを通る道路を走る車もほとんどなくなり、ほぼ完璧にちかい静けさと暗さに包まれる。照明をすべて落として足元の誘導灯も消したコンサートホールの真ん中にたった一人いるような感じと言えばいいか、風が止むと暗闇と静寂に包囲される感じが皮膚感覚として伝わってくる。日頃暮らしている武蔵野の夜とはまったく異質な感じがした。


 中古の大型スピーカーでCDを再生してみた。隣接する民家がないのでどんなに大きな音をだしても迷惑になる心配はないのだが、小さな音量でマイルスのトランペットを聴いてみた。ピンと張った絹糸のような艶やかな弱音が闇の中に広がった。これでまた新しい楽しみが増えた。


 技術的な環境としては、テレビの視聴環境は持ち込まないことにした。地上デジタル対応のアンテナは設置されているが、受像機そのものを持ち込まないことにした。また、電話やインターネットに接続できる通信回線も持ち込まないことにした。限りなくリアルタイムの現代文明から距離をおいた生活環境を構築してみたいのである。


 昼間、敷地を回っていたら、奇妙な植物があちらこちらに伸びてきているのに気がついた。茎の様子や花の様子から、サトイモ科テンナンショウ属のマムシグサだということが分かった。根は有毒だが、漢方では薬として使われることがあるらしい。植物図鑑だけは何冊も持ち込んである。(画像は敷地で見つけたマムシグサ、怖そうな名前だね)