武蔵野日和下駄

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 新たな生活空間の構築(23)


《自然災害のリスク評価その3--火山災害のリスク》


9月27日11時52分、長野、岐阜両県境にある日本百名山のひとつ御嶽山が突然に噴火、
死者50名を超える戦後最悪の火山災害が発生した。
思いもかけない噴火に遭遇して不運にも命をなくされた方々に、心より哀悼の祈りをささげます。


山荘の自然災害リスクを検討した際に、
火山のことは気にかからないではなかったが、
風水害に注意を集中してしまった。
今回の惨事で、この国が世界でも有数の火山国であることを再確認、
改めて山荘周辺の火山災害リスクを再評価する必要性を痛感した。


山荘が位置する群馬県には、気象庁によれば、
「活火山は、草津白根山浅間山日光白根山赤城山榛名山の五つ」となっている。
活火山が五つというのは、都道府県でも多いほうである。
子どもの頃、社会科で習った「現在活動している火山」の定義から、何度もこの定義は変遷して、
現在では「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」に変わっている。
この点を考慮に入れても、活火山が多いことには変わりはない。
それでは、具体的に5つの活火山を点検してゆこう。


あまりに広すぎる活火山の定義では、防災上漠然としてしまいすぎるので、
気象庁は、「火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山」として、
対策が必要な活火山を5段階に分けて分類している。これを参考にしてみよう。

浅間山草津白根山は、噴火前の御嶽山と同じ「レベル1」−(平常)
日光白根山は、過去100年程度以内に火山活動の高まりが認められている火山とされる「レベル2」−(火口周辺規制)
この浅間山草津白根山日光白根山の三つは、
気象庁が指定する「常時観測火山」(全国47火山)にも選ばれており、
地震計や遠望カメラなどで24時間の観測態勢がとられている。

このように常時観測火山が三つ県も多くはない。
以上で分かるように噴火のリスクが比較的高いと評価されているのが、
浅間山草津白根山日光白根山の三山であり、
赤城山榛名山は「常時観測火山」の対象外。
対象となっている三山は、山荘との距離もあり、
大噴火が起きれば火山灰などの被害は予想されるものの、
火砕流や噴石による直接の被害は考えなくてもいいように思われる。


問題なのは、山麓に位置する赤城山の活火山としてのリスクをどのように評価するかである。
ウィキペディアによれば、赤城山の「最新の噴火」の項に次のような記述があったので引用しておこう。

吾妻鏡」の中に「建長三年四月十九日(1251年5月11日)赤木嶽焼」とある(赤木嶽は当時の呼び名)。この記述を根拠に気象庁は活火山に指定しているが、噴火に相当する堆積物は見つかっていない。
カルデラ内にある最新の火山活動地形(同時噴火で形成された小沼タフリング・血の池火口)は、約2万4000年前に形成されたと推定されており、それを榛名山が6世紀に起した噴火で降らせた、榛名伊香保降下軽石が表面を覆っていることから、吾妻鏡の記述は山火事を意味する可能性が高いとされる。南麓の寺の火事のことではないかという説もあり、山火事とすると「概ね過去1万年以内に噴火した火山」と定義されている活火山には該当しない。
一方、建長3年の噴火について吾妻鏡以外にも言及する史料が発見されている。三夜沢赤城神社の神官家に伝来した古文書「赤城神社伝来記」のなかに、「建長三年頃、当於呂嶽、春より焼け始め、四月十九日焼出、、石砂をふらす事夥しけれ共、当所は無難なり、今赤石平是なり」(於呂嶽は荒山、赤石平は現在の小麦沢)とある。峰岸純夫は、赤城の大穴(大穴川の源頭の沢、3〜4万前の水蒸気爆発の火口跡と推定)で小規模な水蒸気爆発がこの建長3年にあった可能性を示している。

文献上では、このような記述を基にして推測されているらしいが、不確かな点も多いようである。
山頂部が噴火によって形成されたのが約50万年前、
山頂のカルデラができたのが約4.5万年前頃と推定されているので、
長い間噴火を休んでいるのは間違いないようである。


以上で分かったことは、問題の赤城山は、近い将来には噴火する恐れは限りなく少ない、
比較的安全な活火山と評価していいように思われた、やれやれ一安心(苦笑)。
何か未知の情報をご存知の方がいらっしゃったら是非ご教示願いたい。


なお参考のため気象庁火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表は以下の通り

レベル5(避難)       噴火警報    居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)    噴火警報    居住地域厳重警戒
レベル3(入山規制)    火口周辺警報 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険 火口周辺危険
レベル1(平常)       噴火予報    平常