武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 新たな生活空間の構築(40)


《雑木林を愉しむ》


この山荘が気に入ったのは
原生林に近い雑木林が家屋の周りに
たっぷりと広がっていたからだった。
植林された整然とした林ではない自然のままの
雑然とした雑木林の広がりは美しくはないが
その中にいると不思議と気持ちが朗らかになる。
だから敷地を利用して庭造りをするつもりはまったくない。
(画像は自生のヤマツツジの新芽をぬらして輝いている春の雨)


買ってきた落葉樹を植えようとして
スコップで地面を掘ってみて吃驚した。
無数の根が複雑に絡みあった状態が
地表から30cmの深さまで続いている。
3cmほどの太いのや産毛のように細いのまで
びっしりと土の中に網の目がはりめぐらされている。
土壌の表面を蔽い尽くしている根のネットワークを掘るのは容易ではない。


地表からは窺い知れない地面の下の生存競争も
相当に激しいものらしいということが推測される。
4月になって赤城山麓も弱い雨の日が多い。
恵みの雨だとよろこんでいたのだけれど
地中に浸透した雨水をめぐって
土の中では激しい争奪戦が静かに進行していると思うと
スプリンクラーでも設置して水をたっぷり
撒いてやりたいような気がしないでもない。
でも、自然のままに何もしないで置いておこう。


何日か現住所で用事をこなして数日ぶりに山荘に行ってみると
芽吹き始めた木々の新芽がみるみる大きくなっている。
考えてみれば、地下茎の網の目の間の土壌には
微生物やバクテリア、小さな昆虫の仲間が
微細な生態系をつくって暮らしていることが分かっている。
凄い土壌環境のうえに山荘は位置していることになる。
それらの総てを私的所有という形で自分のものにして
山荘生活を愉しんでいるのだと思うと
何だか深い感慨が湧き上がってくる。