武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 新たな生活空間の構築(50)


アシナガバチとの共存、その2》

去年は山荘の軒下二箇所にアシナガバチが営巣
雑木林にすむ昆虫の幼虫狩人として共存しようと決め、
干渉し合わないように気をつけて見守ってすごした。
晩秋から早春にかけて、生き残った女王蜂だけが十数匹かたまり
軒下の隙間から外壁の空洞部分に潜りこみ冬眠した。
寒さが遠のいた4月半ば、全部の女王蜂が旅立っていなくなった。


それからしばらく、山荘の周辺ではアシナガバチの姿をほとんど見かけなくなり、
今年は山荘で巣作りするのは断念したのかと、
少し淋しく思った日もあった。
時折、雑木林を飛んでいる姿を見かけたが、
昨年と比べてあまりに数が少ないので嫌われたかなと気になっていた。
スズメバチが天敵なので、襲撃をうけて全滅したのかと心配もした。


ところが、6月にはいって、4箇所に巣作りをしているのをみつけた。
一箇所だけは、どうしても私たちが頻繁に通るところだったので
虫が苦手な方も来ることもあり申し訳ないが撤去させてもらい、
3箇所の営巣を陰ながら見守ってゆくことにした。

アシナガバチの習性を調べてみると
雄はすべて働き蜂で、冬が来ると冬眠する術もなく
すべて死滅してしまうというから悲しい。
越冬するのは雌の女王蜂だけで、春が来ると最初の女王蜂は
たった一匹だけで、巣を作り、卵を産み、幼虫を育てるという
幾つもの役割をこなし、働き蜂が孵化して活動をはじめると
やがて持てる力の総てを使い果たし使命を全うして
次世代の女王蜂にその座を譲って、巣から落ち死んでしまう。
何ともけなげな一生を送る女王蜂だが、
現在、長女の次世代の女王蜂が孵化して、
働き者の雄の働き蜂を孵そうと
さかんに活動中である。


一つ疑問に思ったことがある。
最初の女王蜂が巣作りの途中に何らかのトラブルに遭遇して
子育てができなくなったらどうなるのだろうか。
調べてみると、やはりその巣は放置され、幼虫たちは餓死して
その巣はそのまま朽ち果てるのだそうだ。
ある調査では、巣作りをしている女王蜂の約半数が
何らかの事情で巣作りを続けられなくなって
巣作りは途中で放棄されるらしい。
なかなか自然界は厳しい。


最初は、敷地の山野草につく昆虫の幼虫を食べてくれる益虫として
共存をきめたアシナガバチだったけれど
その生態を知るにつけ、アシナガバチがいとおしくなってしまった。
詳しく研究している人たちは、女王蜂や特徴のある働き蜂に名前をつけ
固体を識別できるようにして、さらに詳細な観察をするようだが
今のところ、そこまでやろうとは考えていない。