武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 新たな生活空間の構築(59)


《野良猫サンちゃんその後》

山荘に来るようになった野良猫サンちゃんは
とてもシンプルな分かりやすい猫である。
我が山荘とその住人を、彼は
食べ物を提供してくれる食堂と休息所
この二つの機能をもつものと理解しているようだ。
(右の画像は、椅子の上で眠り込んだサンちゃん)


猫は気まぐれな生き物と思われているようだが
サンちゃんの立場で考えてみると
気まぐれなところはほとんど感じられない。
サンちゃんが山荘にやってくるのは
なによりも空腹になって食べ物が欲しいからである。
それ以外で山荘に来るとしたら
縄張りのパトロールの途中でたまたま立ち寄っただけ、
サンちゃんは定期的に縄張りをパトロールして
何か変わったことが起きていないか見回りをしている。


サンちゃんは子猫の時から野良猫だったのか
物や人とじゃれたり遊んだりしない。
どんな動きや音で誘っても全く関心を示さない。
少しつまらない感じもしないではないが
遊び心がないだけにを何するのにも目的や意味があり
非常に分かりやすい。


鳴き声を立てるのは「ここにいるよ」という
注意喚起か、「食べ物を頂戴」という
食料要求のためであることがほとんどである。
その他の要求で鳴くこともあるけれど
何をして欲しいのかすぐに分かる。


食べ終わって満足すると寛げる居場所を探し
体を嘗め回すグルーミングをして
ぐっすりと寝込むことがもう一つの関心事である。
安心して気持ちよく寛げる場所が
今のところ次々と変わっている。
リビングに入ってくるようになって
最初は足拭きマットの上だったのが
壁際の空いている椅子になり
畳の部屋のタタミの上で液体のように広がり
脱力して熟睡するようになったりしている。
安心して満足している信号はゴロゴロ
おしみなく盛大に喉を鳴らして知らせてくれる。


日が翳ってくると
一体どこにネグラがあるのだろうか
リビングの窓を空けて欲しいと鳴いて
ゆっくりとどこか夕闇の彼方へと帰ってゆく。
サンちゃんはとても好奇心の強い猫だけれど
どうもその好奇心の焦点にあるのは
食べ物と休息場所の二つに絞られるような気がする。
そう思ってサンちゃんの行動を見ていると
すっきりととても分かりやすいのである。