武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 新たな生活空間の構築(61)


《山里で夜ひとり快適に過ごすには》


人間が密集している都会に暮らしていると分からないことがある。
風が強くて気温も低く天候もすぐれない夜
ひとりで山の中で生活していると何だか鬱々として
朗らかな気分に程遠い心理状態に陥ることがある。
人気のない山奥の、しかも周りには自然しかない場所いると
時にはどうしようもなく気分が滅入る夜がある。
私は気分に浮き沈みのある普通の人間にすぎないので
そんな時はどうすればいいか対策を考えておきたい。
山里の夜の暗さは半端ではない、
至る所に本物の闇が偏在するのである。


都会には、手短に気分転換が出来る施設が沢山ある。
お金さえ払えば、明るい照明が光り輝いていて
落ち込んだ気分を回復させることの出来るサービスが
幾つも待ち構えてビジネスを展開している。
ところが田舎の山奥にはそんなものは何もない。
田舎暮らしをするためには何よりもそのリスクを受け入れる必要がある。
一人暮らしの夜に耐えられない人は田舎暮らしに向いていない。


一番簡単なのは、夜は早めに寝てしまい夜明けと共に起き出すこと
日暮れと共に寝て日の出と共に起きるという古の暮らし
昔の賢者の生き方は、人気のない田舎暮らしの要諦といえる。
私は、賢者でも仙人でもないので少しは夜を楽しみたい。
ひとりで夜を愉しく過ごすにはどうしたらいいか。


最近気が付いたことだが、朗らかな夜のためには
ホラー物や恐怖物、深刻で暗い読み物は読まないことがまず大事、
昼間でも、ストーリに引き込まれて読みふけってしまうと
その影響が脳みそのどこかに残ってしまうようで
何となく夜が怖くなってしまうのである。
悲惨なノンフィクションなども情景を思い出してしまい
とても明るい心境で夜を楽しむことが出来なくなる。
暗さを伴った読み物はひとりの時は読まない方がいい。


私の蔵書には、田舎暮らしの夜を過ごすには
あまり適さないジャンルのものが可なりの割合を占めている。
現代を知り世界の出来事に目をひらいていようとすると
どうしようもなく増えてしまった書物にそんなものが多い。
戦後70年生きてきて、この国は戦争当事国にはならなかったものの
見るもの聞くもの楽しいことよりも悲しいこと悲惨なことのほうが多かった。
私の本棚に暗くて悲しい怖い本が多いのは、そんな時代の反映かもしれない。


本だけではない、大きな画面で楽しもうと思って
山荘に移動したブルーレイやDVDなどの映画や動画も同じ、
心霊現象や恐怖をテーマにしたものは、ひとりで見るには適さない。
三丁目の夕日シリーズや寅さんシリーズ、釣りバカシリーズなどは
ひとりで見ていても楽しい夜を過ごせる。
高品質のユーモアは山里の夜の友になる。
世界各地の観光旅行シリーズなども大画面を満喫できる。
自然界にテーマを求めたドキュメンタリーなども気分を透明にしてくれる。
少しずつひとり山奥で夜を過ごすにふさわしいものが分かってきた。
秋冬の夜は長い 田舎暮らしのスタイルもある程度学習が必要である。