武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 新たな生活空間の構築(71)


《新しい猫の来客》

 二月に入って少し時間が空いたので早速山荘に行ってきた。前回来たとき、玄関の前まで除雪してあったが、どなたが除雪してくれたのか、分からないままだった。考えられるのは(1)前橋市市道なので市の除雪車か、私有地まで除雪してあったので、この線は薄かった。(2)近所で除雪できる重機を持っているのは、東に一軒、西に一軒、多分このどちらかだろうと推測していた。今回、やはりこの内の一軒の方が除雪してくださったことが分かった。山村では、困っていると分かると頼まなくても自然に助け合って暮らしを支えあう。山里での付き合いは単なる社交ではなく、暮らしの持続そのものである。こういう濃密な人間関係もいいものである。

 今回は隣人のほかに、面白い来客があった。茶トラ模様の若いメス猫が、リビングの外に現れてニャーニャー鳴いたのである。猫がこちらの顔をみて鳴くときは、何らかのコミュニケーションを意図してのことである。窓を開けてやるとピョンと飛び込んできて、さらに人懐っこく鳴いているので、猫餌を出してやった。空腹だったらしく凄い勢いで食べ、もっと欲しいと鳴くので追加をだしてやった。それでも鳴き止まないので、温めの水を出してやったらたっぷり飲んで、やっと落ち着いた。(右の画像は今回現れた茶トラのチーちゃん、カメラ目線でキリッとしているように見えるが、とても人懐っこい若いメス猫)

 その猫は、食べ終わると部屋の隅に置いてある、使われていない猫トイレをまず点検し、リビングと和室を隈なく調べ要所要所に匂いつけのために頭をこすりつけ、室内が安全で落ち着ける場所であることを確かめた上で、ツレが椅子から立ったのを見て、その椅子に登りやっとリラックスして横になった。その間、私たち二人にも顔や頭を擦り付け、点検済みで猫嫌いではない安全な生き物であることを確かめ、時々ゴロゴロ喉を鳴らして愛嬌をふりまいて、徐々に自分の味方にしていった。(下の画像はアンモナイトになって眠りについたチーちゃん、何とも愛らしい小娘猫である)

 その日は幸い最後までサンちゃんは現れなくて、チーちゃんは掘り炬燵の脇でお泊りをした。夜中、オシッコとウンチを猫トイレで上手に済ませたので、迷子になった飼い猫だろうと話し合った。一日目、リビングから出してやったけれど、3時間ほどして帰って来てしまったので、自分の家が分からなくなったのだろうと思い、泊めてやったのである。

 次の日の夕方、しばらく来なかったサンちゃんの鳴き声が聞こえてきた。私はチーちゃんと猫トイレを読書室に慌てて移し、ツレがサンちゃんをリビングに迎え入れた。聞くところによると、サンちゃんは他の猫の気配を察して落ち着かなかったそうである。その間、私とチーちゃんは読書室で不安な時間をすごした。その日も、チーちゃんは帰れず、お泊りとなった。すっかり慣れて、ツレの毛布の端にもぐりこんだり、上に乗ったりしてツレはよく眠れなかったそうである。

 次の日の朝、早朝にサンちゃんがまた現れたので、私とチーちゃんはまた読書室。サンちゃんが帰ってからリビングに戻るという変則的な時を過ごした。この日は現住所に帰る日なので、どうしようか悩んだけれど、チーちゃんを外に出してやったらいなくなったので、そのまま帰ることにした。車に荷物を積んでいた時、チーちゃんが現れたが、外で出会ったせいか、チーちゃんは一目散に逃げていった。まだ人間の識別ができるほどには慣れていないからだろう。これ幸いと私たちは車を発進させた。その後、チーちゃんはうまく自分の家に戻れただろうか。