武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 新たな生活空間の構築(78)


《目まぐるしく変化する山荘の春》

 春の山荘では、季節の進行と共にあわただしく展開する野草たちの営みから目が離せない。4月には自生のカタクリが一斉に花をつけ、まだ数は少ないがシュンランがひっそりと清楚な花をひらく。どちらも日当たりの良い雑木林の早春の可憐な草花。この花々を見るためにも雑木林の手入れは出来る限り続けようという気持ちになる。

 前回報告したアシナガバチの母親たちは、みるみる数が減ってゆき越冬した軒のまわりにはもう一匹も残っていない。次世代を育てるに適した場所を探して、赤城の南麓一帯に拡散していったのだ。山荘のまわりでもユーモラスに足をたらして飛行するアシナガをたびたび見かける。他にもクマバチやスズメバチも見かけるようになった。狩をするハチと採集するハチが入り乱れて飛行している。ハチたちにとっても多忙の春たけなわとなってきた。

 先日、ツレの山友達が7名、山荘に泊りがけで遊びにみえた。一度にお迎えする人数としては最多の御一向様である。丁度、敷地はヤマザクラ満開の時で、格好のロケーションでお迎えできたのが幸いだった。食事は皆さんに作っていただいて、夜は宴会、寝るのは好きな部屋で寝袋で各自寝てもらうという山小屋スタイル。これほど山荘がにぎやかになるのは、私たちが使うようになって初めてのことだった。

 5月に入ると、あちこちに点在するヤマツツジが花を開き、地上では小さなチゴユリが一面に花をつけ風にゆれる。地下に潜んでいた野草の種が発芽し、球根や地下茎も一斉に芽を出し、地上は足の踏み場もない。来客にはどこに足を下ろしても必ず何らかの野草を踏みつけてしまうが、気にしないようにと言う事にしている。チゴユリの群落などどこかを踏まないと動きが取れない。(右の画像は華麗に咲き誇るヤマツツジを眺めているように見える猫のチーちゃんと背後に広がる新緑、手前の緑は芽吹きはじめた萩の株)

 周辺にお住まいの皆さんが一斉に草刈機を使い始めた。この時期に一度は草刈をしておかないと、地面は大変なことになるからである。私も負けじとこのゴールデンウイークに敷地の草刈をやったのだけれど、機械では発芽したばかりの野草を見分けて刈るのは不可能、チゴユリヤマユリマムシソウも区別なく、芽を出し始めた笹の小さな筍と一緒に刈り払うしかなかった。草の間には動き始めた昆虫たちの慌てふためく姿も見え隠れしていた。引っ掛けてしまった生き物達には申し訳ないことをしてしまった。君達は数で勝負しているような生き物なので、若干の犠牲は許してもらうことにしよう。(左の画像はチゴユリの小群落、名前の通り本当に小さくて可愛いい野草)