武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

木登り事始 その5

気に入っている木登りデバイス(道具)その1

ユニセンダー  
 
 ユニセンダーUnicender アメリカのユタ州にあるロープワーク関連製品メーカーROCK EXOTICA社のユニークな木登りデバイス。SRTシステムでもDRTシステムでもどちらでもそのまま使用できて、登攀する時にも下降する時にも道具を付け替えることなく一つのデバイスできてしまう多用途性が凄い。しかも初心者や経験の浅い者(自分のこと(笑)も簡単に使えてしまう使い易さ、難点は高価なことぐらいか。

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画像は取説からの引用、ユニセンダーのパーツと仕組みが分かりやすい

 ロープへの装着方法はいたって簡単で間違いが発生する余地はほとんどない。登攀時の操作についても、複雑な操作は必要なく人的ミスの発生する可能性は低い。僅かに残る難点といえば、あまりに多用途なので、構築できるシステムに迷いが生じいつまでたっても最適なシステムについて迷いがふっきれないこと。それと唯一つ、降下の方法とその感触で好き嫌いが出てしまうかもしれないことか。

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左がコントロールモード、右がアドバンスモード、取説の画像と色が違う

 今回は、そのユニセンダーの降下方法について、少し詳しく取り上げてみたい。取扱方法については、英語の取説しかないので頑張って読んでみると、最も安全な<コントロールモード>と細心の注意を必要とする<アドバンスモード>がでている。画像左の上部ハンドルと下部ハンドルにロープを巻きつけて降下するのがコントロールモード、降下が始まる一瞬ガックンとなる小さなショックがあり、安全なことは分かっていてもいつもヒヤリとする。アドバンスモードは上部ハンドルと下部ハンドルを片手で挟み、もう片方の手はしっかりとロープを腰の位置でセルフビレイ(自己確保)して滑り出しを確認しながら降下する。個人的にはアドバンスモードの滑らかで自在な降下制御が好みなのだが、取説ではくれぐれもどうしても必要な時以外には安易に使わないように警告している。少しでも怖いと思ったらコントロールモードを推奨します。


 それともう一つ、この製品はアルミ合金で出来ており、消耗は主にこの下降の際に発生すると思われる。取説では「ユニセンダは最終的には消耗し磨り減って、荷重を保持することが出来なくなり滑りだします。」と恐ろしいことをはっきりと指摘している。コントロールモードでは、ロープを巻きつける上部と下部の両ハンドルが磨り減ってくる。アドバンスモードでは、4枚のロープを締め付ける穴あきブロックの締め付け部分がロープと擦れて磨耗する。アルミ合金をメッキしてあり磨耗具合が分かりやすく出来ているのはメーカーの安全配慮だと思う。使用する前後の点検が常に必要だと取説は警告している。


 以上のポイントが理解できてそのリスクが納得できれば、この道具は木登りギアとして素晴らしいデバイスとなると思う。

 

 (追記)ユニセンダーの取扱説明書を読み返していて、とても気になった箇所があるので引用しておく。

The unicender is a high-performance climbing tool, but by no means is it only for professionals.

ユニセンダーは高性能のクライミングツールですが、決してプロのためのみのものではありません。

 こういう指摘はメーカーの良心あらわれだと思う。販売対象を自ら狭めかねないのにデバイスの特徴をこうもあからさまに書いてしまうとは。続けてこうも書いている。

初心者やレクリエーションクライマーには、特にダブルロープテクニック(DdRT)を使えばユーザーにとって使いやすいものになるでしょう。登攀の頂点で危険な変化がないので、ユニセンダは本質的に別々のアセンダーとディセンダーを使用するより安全です。ユニセンダーは、登攀から下降へのなめらかな移行を提供し ます。

 毎日のように仕事で、しかも過酷な状況でロープやデバイスを酷使するようなプロの仕事用のものではないということ。メーカーのこの割り切りが意味するところを良く理解して使いたい。私がユニセンダーが気に入っている理由でもある。