武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

木登り事始 その7

自作の<膝アッセンダー>

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 以前のこと、ネットでよその国のツリークライミングのサイトや動画を見ていたらKnee Ascenderなるものを使ってロープを登攀している場面を見かけて思いついた。膝からデバイスまでで使うアッセンダーと、もう一つ膝から足までをフットアッセンダーでカバーすれば、両足を交互に使って梯子登りのような動きで素早く一本のロープを登攀ができるのではないか。


 試作品として作ったのが、30cmのスリングをクロールの下のホールに結びフットループとし、上のホールに2mm径のゴム紐を折り返し40cmで結び、端に親指が掛かる輪っかを作った画像の仕掛け。スリングに足を掛けて、ゴム紐を片方の親指に掛けてアッセンダーを引き上げて登るというアイディア。文字通りの見よう見まね。フットアッセンダーもニーアッセンダーもPPE( personal protective equipment)個人用防護具としての安全規格対象外なのでできる試行錯誤(笑)。趣味では使えても労働現場では無理、笑われてしまう。


 何度も室内や地上近くでテストしてみて大丈夫と見極めがついたので、実際に木登りに使ってみた。具合が良くて気に入ったのだが、身体を支えるデバイスを一つしか使っていないことが不安だった。フットアッセンダーも膝アッセンダーも、デバイスがトラブッた時にはバックアップとして機能しないのは明らかなので、生命保護のバックアップなしで登っていることになる。空いている片手のハンドアッセンダーにカウズテイルを付けてバックアップ機能を持たせれば安心なことは分かっているが少し面倒臭い気もする(苦笑)けれどこれしかない。


 多くのクライミングバイスの取扱説明書で、一つのデバイスだけにロープ上で命を預けることのリスクを必ず指摘しており、何らかのバックアップの手立てをとるように警告している。この命を守る二重の保護措置は重要。ネットの動画などを見ていると、バックアップなしの映像がほとんどではあるが、ヤバイと思ったらやはり安全規格をもったデバイスとハンドアッセンダーの併用がこのシステムでは必須だろう。

作業日誌その149

*[山荘便り][作業日誌その149]

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少しずつ成長してきたヤマグリのメシベ、すでに栗のイガの形をしている。触ってみるとまだ柔らかくて痛くはない。

7月11日(木)曇りのち雨
午前、買い物と移動。
午後、宅地部分と南斜面の草刈り、ハンモックの片側支柱テスト、読書と音楽、ホタル観察。
7月12日(金)降ったり止んだり
午前、ナイフ類のタッチアップ、敷地見回りと葛(クズ)切り。
午後、SRTシステムのロープセット製作、読書と音楽。
7月13日(土)曇り
午前、南斜面の草刈り(この日はチップソーを使用)、枝垂れ桜の枝先の剪定。
午後、ツリクラギアのメンテ、音響システムの調整、音楽鑑賞。
7月14日(日)雨
午前、灯油タンクの片付け、薪ストーブの点検と斧のメンテナンス。
午後、ツリクラ練習、読書と音楽。
7月15日(月)雨
午前、地場野菜の買出し、屋外用ガソリンストーブのメンテ。
午後、移動。

 

木登り事始 その6

樹上で手が届かない枝や実へのアクセス

 地上で歩き回っている時と違って、樹上では手を伸ばして届かなければそのままではどうすることもできない。自分の位置を何らかの方法で移動させるか、手の代わりになる道具を使うか、どちらかしかない。上下に移動して木に登るだけでも初めのころは結構楽しいのだが、やがて木の上ゆえの不自由さが分かってきて、新たな工夫が必要となる。


 私の場合は、強風で折れたコナラの枝を処理する時に、手が届かなくて困ったのが最初のケースだった。折れた枝のすぐそばまで辿り着いたけれどノコギリを伸ばしても届かず、どうしようも出来ず、何とか手が届く少し下の小枝を切って敗退した。リベンジは、カバーをつけたポールソーに紐をつけて引き上げ、ポールの長さを利用して何とか、大きな折れ枝を切り落とした。ポールソーの操作は危険と隣り合わせで苦労の連続だった。何とかもう少し横方向に自由に動けるようになりたいと思った。


 ツリークライミングの移動はロープにぶら下がった状態なので、ロープを樹上で外すことはありえない。移動したいところにもう一つのアンカーを設置して、少し降下してその場所に移動するという方法をとる。今いる所よりも高い所に登る場合も同じ、樹上で新しいアンカーを架設することが課題となった。

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上の画像は、ハーネスにセットするときのもの、下の画像はそれらをバラした状態、ウエイトは6オンス。


 原理的には地上での方法と同じ、ウエイトのついたラインを目標に向かって投げ、目標の枝にかかって垂れ下がった錘を棒の先に付けたフックに掛けて引き戻し、ラインにロープを結んで目標の枝にロープを掛けてもう一つのツリクラシステムを架設する。そのシステムに体重を移し、目標に接近。この樹上の作業をする時、両手を使うのでしっかりしたランヤードという確実なバックアップは必須。


 この時、樹上でのスローラインと錘の手繰り寄せをどうするか、嵩張るものや操作性の悪いものはトラブルの原因となるので困る、いいものがないか四方八方探して何とかみつかった。大工さんが使うチョークラインの道具と、電気工事の配線工事に使う釣竿のような道具が便利なことがわかった。<タジマ ピーライン チョーク・はや巻 PL-CLHM>という製品と、<SANSHUN 4m伸長スーパースリムフィッシャーSPCF-4000>。両製品とも落下防止の細紐をとりつけ樹上作業がしやすいようにしてハーネスに取り付けられるようにした。 ピーラインチョークのラインは30mのものに交換、スリムフィッシャーは手繰り寄せやすいように金具を追加。これらの道具を使うようになって樹上の動きがかなり自由になり、隣の木に乗り移ることも手間はかかるけれど何とか出来るようになった。

作業日誌その148

*[山荘便り][作業日誌その148]

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(ホタルが飛ぶ時期に咲く野草ホタルブクロ、刈り飛ばさないように気をつけているので小さな群落が数箇所に出来てきた。保護してやるとどんどん増える)

7月8日(月)曇り
午前、買い物と移動。
午後、東側の居住区画の除湿、西斜面と南斜面の草刈り、読書と音楽、ホタル観察。
7月9日(火)降ったり止んだり
午前、ハンモックの片側支柱作製、敷地見回り。
午後、ツリクラのアイディアテスト、DVD鑑賞兼読書室除湿、読書と音楽
7月10日(水)
午前、敷地脇の沢の点検、移動。

※標高のせいか、梅雨期には山荘はよく雨雲の中にはいる、すると湿度は100%、適度な温度が加わるとカビの温床になりかねない、油断禁物。

作業日誌その147

*[山荘便り][作業日誌その147]

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(ツレの知人からのメールで22日未明、山荘周辺に集中豪雨、数箇所で被害が発生しているとの情報あり、あわてて赤城山荘の様子を見に行ってきた。画像の赤丸の中に我が山荘は位置している。)

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(山荘脇のこの流れが濁流となり、川底の岩や小さな洲、生えてきた草木や倒木、ゴミなどをきれいさっぱり押し流した模様、ゲンジボタルも流されたが僅かな生き残りが夜光っていた。一時的にもとの清流が回復していた(苦笑)

6月24日(月)雨
午前、現住所で用事。
午後、買い物と移動、敷地見回り、ツリクラギアの改造、ホタル観察、読書。
6月25日(火)晴
午前、道路脇のササ、ヤマグリなどの剪定、(前橋市道路補修工事)、地場野菜の買出し。
午後、北斜面のコナラにテストクライミング胴吹き芽剪定、ホタル観察、読書と音楽
6月26日(水)晴れ
午前、南斜面のヤマザクラを笹薮から救出、南斜面の刈り払い。
午後、移動。

作業日誌その146

*[山荘便り][作業日誌その146]

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ヤマグリの花盛り、昆虫達の宴会場

6月18日(火)
午前、現住所で用事。
午後、買い物と移動、南斜面の刈り払い、読書と音楽。
6月19日(水)晴
午前、工作室の片付け、地場野菜の買出し。
午後、北側のケヤキの胴吹き芽の選定、DRTシステムの試行、読書と音楽
6月20日(木)晴れ
午前、北東斜面のコナラにクライミング電線にかかりそうな小枝の除去。
午後、長女の出迎え、歓談と会食、長女にツリクラの室内手ほどき、夕食は宴会。
6月21日(金)晴れ
午前、長女の送迎。
午後、移動。

木登り事始 その5

気に入っている木登りデバイス(道具)その1

ユニセンダー  
 
 ユニセンダーUnicender アメリカのユタ州にあるロープワーク関連製品メーカーROCK EXOTICA社のユニークな木登りデバイス。SRTシステムでもDRTシステムでもどちらでもそのまま使用できて、登攀する時にも下降する時にも道具を付け替えることなく一つのデバイスできてしまう多用途性が凄い。しかも初心者や経験の浅い者(自分のこと(笑)も簡単に使えてしまう使い易さ、難点は高価なことぐらいか。

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画像は取説からの引用、ユニセンダーのパーツと仕組みが分かりやすい

 ロープへの装着方法はいたって簡単で間違いが発生する余地はほとんどない。登攀時の操作についても、複雑な操作は必要なく人的ミスの発生する可能性は低い。僅かに残る難点といえば、あまりに多用途なので、構築できるシステムに迷いが生じいつまでたっても最適なシステムについて迷いがふっきれないこと。それと唯一つ、降下の方法とその感触で好き嫌いが出てしまうかもしれないことか。

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左がコントロールモード、右がアドバンスモード、取説の画像と色が違う

 今回は、そのユニセンダーの降下方法について、少し詳しく取り上げてみたい。取扱方法については、英語の取説しかないので頑張って読んでみると、最も安全な<コントロールモード>と細心の注意を必要とする<アドバンスモード>がでている。画像左の上部ハンドルと下部ハンドルにロープを巻きつけて降下するのがコントロールモード、降下が始まる一瞬ガックンとなる小さなショックがあり、安全なことは分かっていてもいつもヒヤリとする。アドバンスモードは上部ハンドルと下部ハンドルを片手で挟み、もう片方の手はしっかりとロープを腰の位置でセルフビレイ(自己確保)して滑り出しを確認しながら降下する。個人的にはアドバンスモードの滑らかで自在な降下制御が好みなのだが、取説ではくれぐれもどうしても必要な時以外には安易に使わないように警告している。少しでも怖いと思ったらコントロールモードを推奨します。


 それともう一つ、この製品はアルミ合金で出来ており、消耗は主にこの下降の際に発生すると思われる。取説では「ユニセンダは最終的には消耗し磨り減って、荷重を保持することが出来なくなり滑りだします。」と恐ろしいことをはっきりと指摘している。コントロールモードでは、ロープを巻きつける上部と下部の両ハンドルが磨り減ってくる。アドバンスモードでは、4枚のロープを締め付ける穴あきブロックの締め付け部分がロープと擦れて磨耗する。アルミ合金をメッキしてあり磨耗具合が分かりやすく出来ているのはメーカーの安全配慮だと思う。使用する前後の点検が常に必要だと取説は警告している。


 以上のポイントが理解できてそのリスクが納得できれば、この道具は木登りギアとして素晴らしいデバイスとなると思う。

 

 (追記)ユニセンダーの取扱説明書を読み返していて、とても気になった箇所があるので引用しておく。

The unicender is a high-performance climbing tool, but by no means is it only for professionals.

ユニセンダーは高性能のクライミングツールですが、決してプロのためのみのものではありません。

 こういう指摘はメーカーの良心あらわれだと思う。販売対象を自ら狭めかねないのにデバイスの特徴をこうもあからさまに書いてしまうとは。続けてこうも書いている。

初心者やレクリエーションクライマーには、特にダブルロープテクニック(DdRT)を使えばユーザーにとって使いやすいものになるでしょう。登攀の頂点で危険な変化がないので、ユニセンダは本質的に別々のアセンダーとディセンダーを使用するより安全です。ユニセンダーは、登攀から下降へのなめらかな移行を提供し ます。

 毎日のように仕事で、しかも過酷な状況でロープやデバイスを酷使するようなプロの仕事用のものではないということ。メーカーのこの割り切りが意味するところを良く理解して使いたい。私がユニセンダーが気に入っている理由でもある。