武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 7/15の朝日新聞の報道によれば、経済産業省の調査の結果、アスベスト関連の製造業89社のアスベストが原因と見られる死者374人という。とんでもない数字だが、これは氷山の一角。自分がアスベストの被害者とも知らず、一体何人の人がこの世からはじき出されてしまったことか。恐ろしい国に生きてきたことに唖然となる。(写真は散歩の途中で見かけた庭先の素敵な花)

toumeioj32005-07-15

 社会面には、建設業の下請け孫受け業者と従業員のカウントされない被害の一端が記事となって出ている。この国の産業構造は、日の当たる製造業に奉仕する2重3重の下請け業が現業労働の大半を引き受けることになっている。リスクが大きくなればなるほど、下請けからさらに下位の業者に3Kと称される汚れ仕事がまわされることになっている。教育ママが我が子をいい大学にいれ、一流企業に就職させようと必死になるのにはそれなりの理由があるのだ。下積みの人生の何と過酷なことか。
 一時期、若者たちが3K仕事をいやがって話題になったが、考えてみれば賢明な判断だった。3Kと呼ばれる仕事は、限りなくアスベストに近い仕事だった。調査をまとめた経済産業省のお役人が「これほど大きな被害が発生していとは予想できなかった」とコメントしたそうだが、完全なる想像力の欠如、あきれるほかはない。企業の上っ面を美味しい天下り先を物色するような視線でなでている限り、何も見えてこないのは当たり前。毎年出ている人口動態調査からでもはっきり分かっていたこと、同じ役所の統計ではないか。みんなそろって見てみぬ振りをしてきたからこうなってしまったのだ、マスコミも含めてこの国は本当にどうかしている。
 ある資料によれば1930年から2004年までの70数年間にこの国が輸入した石綿は約1000万トンにのぼると言う。既にアスベストの有害性が分かっていた70年から90年にかけて年間30万トン近く輸入されていた事実がある。このように膨大な石綿関連商品が、加工されてどんな製品になりどこに使われたか、徹底的に政府は情報収集して公表すべきではないか。
 そして、被害はやはり償われなければならない。危険と知りながら、消費者に使わせてきた製造業者、販売業者、何もしないで放置した行政、責任を追及できるところから追求していって被害の負担を引き受けさせてしかるべきだと思う。何度でも言うが、アスベストの危険性は、とっくに分かりすぎるほど分かっていた。普通に考えれば、今頃になって騒いでいる健康被害は予想通りか、まだまだ予想よりも少ない結果しか出ていないと言うべきなのだ。
 この事態をどう切り抜けるか。この国の良心が再び試されているような気がする。あなたの側でもきっと見つかるアスベスト。解体工事現場を見たら1km以上離れて風上へ。業者は必ず心配ない、安全だと言う。その業者が真っ先に死んでいるのに。分かったような顔をして「因果関係は不明」などという識者がいる。複合する因果を放置して、何が識者か、怪しげなものにはとりあえず近づかないのが庶民の知恵。やばいと思ったらとりあえず逃げること、小動物の生存戦略。そして「くさい匂いは、元から絶たなきゃダメ」