武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

上野の国立西洋美術館にドレスデン国立美術館展を見に行ってきた。お目当ては、フェルメールの「窓辺で手紙を読む若い女」1点とドイツロマン主義のフリードリヒの3点。そして、どの展覧会でも期待するお目当て以外のあっと驚くような未知の感動。(画像は満月のドレスデン)

toumeioj32005-08-25

 今回の内容は、ドレスデンに城をかまえたザクセン選帝侯のコレクション。それを展示では、7つのパートに分けて展示するもの。
 第1は、美術収集室の科学計測機器のコレクション、これには目を見張った。16世紀といえば、まだまだ近代科学が始まりかけた頃、科学と魔術も見分けがつきにくかった頃、計測機器の見事なまでの美しさはどうだろう。美術品と見まごうばかりの品々に感慨をもった。デューラーエッチングが5点、科学と美術の親和性の時代を実感。
 第2のオスマントルコ帝国関連の展示品では、兵器と美術工芸品の融合と言うか、美術工芸的なものを展示したのだろうが、美しい武器の数々に驚き。でも、どんなに美しかろうと首を切られたり、命をとられたりするのは嫌、人間何時の世でも殺し合いが絶えないんですね。やだやだ。それにしても何と綺麗なこと。
 第3のイタリア編では、マルコ・リッチ7点、カナレット6点、ベルナルド・ベロット7点、ジョバンニ・パッチスタ・メテリーノ4点、いずれもが克明で明るい大きな風景画、南欧への憧憬が伺われた。大作の風景画が持つ不思議な透明感に驚き、空気が澄んで見える。空と地面が画面の3分の2を占めるところがなんとも面白い。広いという事はそういうことだった。
 第4のフランス部門は、フランス製の工芸品、第5の東アジア部門は、東洋の工芸品。
 そして、第6がオランダ部門、お目当てのフェルメールは、レンブラントの作品として購入されたものらしい。それにしても、例によって窓からの低い陽光に浮かび上がる小さな部屋の佇まい、そして不思議なバランスで立って手紙を読んでいる若い女性、生き生きとしていながら永遠に凍りついたような沈黙の空間。やはり素晴らしい出来ばえ。
 最後の第7のドイツロマン主義の展示。フリードリヒの精神性の強い不思議な風景画、本物の印象はやはり強烈、ヨハン・クリスティアン・クラウゼン・ダールの「満月のドレスデン」は圧倒的。それにしても、ドイツロマン主義の何と東欧的で暗いこと。太陽もぼやけたようにぼんやりとして、月光だけがさんさんと降り注ぐが、あらゆる構築物を縁取る暗いありありとした陰影、ドイツロマン主義の精髄を見せられたようで、背筋が寒くなるような印象を味わった。
 いい展覧会だった。気候のいい時に、また、ドレスデンに行きたくなった。
 ちなみに、ヨハン・クリスティアン・クラウゼン・ダールの絵はメトロポリタンのサイトにあります。興味のある方は、下記へどうぞお越しください。http://www.metmuseum.org/special/Caspar_David_Friedrich/moonwatchers_images.htm