武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 最初に購入したこのシリーズは、家族全員で散々楽しみ痛んで散逸してしまった。今持っているのはブックオフの100円コーナーで見つけた文庫版。最初のメディアファクトリー版は87年7月発行とあるので、18年前に読んで楽しんだという思い出話になってしまうが、衝撃的な料理書なのであえて取り上げる。

toumeioj32005-08-28

 料理を題材にしたマンガの世界は、すでに大きな領域が出来上がっている。「美味しんぼ」の長期連載はまだ継続中のようだし、青年マンガ、少年マンガ、少女マンガなど、どの分野でも料理のマンガ作品がいくつもある。料理本の中にもマンガを使って分かりやすさを狙ったものが何冊もある。にもかかわらず、この「セイシュンの食卓」は画期的だった。
 材料を徹底的に安く絞り込んだこと、最近、100円レシピ、50円レシピが人気のようだが、この本ではこのコンセプトをとっくに実践していた。とにかく、安上がり路線が奇妙に親しみを感じさせ、人気が出た理由の一つ。新鮮だった。
 次に、作り方をこれまた、素晴らしく簡単にしてしまったこと。こんなの料理じゃないんじゃないか、とぼやきたくなるほど簡単料理の連続。手の込んだグルメ路線に背を向けた大衆路線といえばいいか。余りにも簡単すぎて笑えるほど、だが、料理が苦手な人には、これでもいいんだという救いになった(そんなはずないか)。
 そして、見開き2ページの1ページ分をそっくりその料理にまつわるギャグマンガにしてしまったこと。半分以上がギャグマンガで、残りがレシピ、このレイアウトでやると超簡単レシピしか出来なくなるのは仕方がない。ギャクにしてしまったので、余り美味しくはなさそうになってしまう、しかし、空腹を抱えていれば安上がりで簡単、セイシュン時代の諸君ならやってみようと言う気になるかもしれないという料理本の奇書。
 人気があったせいか、第1巻が勇気編、第2巻が情熱編、第3巻が愛情編、第4巻が感涙編、そのほかにベスト編や番外編まで出たようだ。腹が空いていようがいまいが、今でも何時読んでも、面白い。セイシュン時代ってこんなばかばかしい側面があるんだよな、などと呟きながらペラペラページをめくってゆくと、何だか甘酸っぱい気分になってくるから不思議、料理本が好きな人にとって見逃せないシリーズだと確信する次第。料理を食べ物を笑いものにしてケシカランという人がいるかもしれないが、料理であってもやってはいけないことなんて何もないハズ。固定観念や思い込みを見事に打ち砕いたと言う意味で、記憶に値する料理本として評価したい。