武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 「縦並び社会・格差の現場から」「「無保険者」30万世帯以上」(毎日新聞)

 まず<資格証明書>という言葉は、私にとって耳慣れない言葉、意味は

国民健康保険被保険者資格証明書の略。原則として、納付能力があるのに国保料を1年以上滞納した被保険者に、保険証の返還又は期限切れと同時に区市町村が交付する。被保険者としての「資格」はあるが、国保の「受益権」は停止し治療費は全額自己負担になる。国保料の滞納対策の一つとして00年度から国民健康保険法で交付が義務づけられた。

だという。「資格」はあるのに「受益権は停止」を証明し、医療費は全額自己負担せよという困った証明書のこと。国保の未納を少しでも改善しようと、厚生労働省が2000年度から各自治体に義務付けた新しい制度。様々な理由から国保が財政的に根幹から崩壊の危機に直面している表れの一つ。
 それにしても、1月3日の毎日新聞に出てくる63歳の男性の事例は、胸を刺す。70歳になれば老人医療の対象になるところ、丁度谷間に落ち込んでもがき苦しんでいる姿が眼に浮かぶ。見出しにもあるが同様に心ならずも医療費全額負担を強いられている世帯が全国で30万世帯を越えたという。都道府県別の一覧表がある。一位が福岡33724、二位が神奈川32477、三位が千葉24405、四位が大阪21089、五位が北海道17628。地区によって大きな開きがあるが、万を越している都道府県が多い。貧困が全国的に広がってきていることの現われだろう。この現象の背後にあるのは、今この国で進行している大規模な雇用形態の転換と従来型の雇用の崩壊現象ではないかと言う気がする。
 95年頃だったと思うが、旧日経連が「新時代の日本的経営−挑戦すべき方向とその具体策」と題してこの国の新しい雇用・人事戦略を示し、着実にこの国の社会構造に大きな影響を与えてきた。①終身雇用制度を転換し雇用の流動化の促進、②複線型の人事処遇制度の促進、③総額人件費管理と人件費の抑制、これらの方針が、10年をへてこの国の雇用構造を大きく変化させてきた。一度狂い始めた世の中の歯車は、狂った方向に今後一層回転して行かなければいいが。明るく希望に満ちて一年を見通したいのに、心ならずも暗い記事が続いた。