武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『アランフェス協奏曲』村治佳織(ギター)新日本フィルハーモニー交響楽団

toumeioj32006-03-05

 かなり以前に出たCDだが、スペインへの旅行を計画しているので、久しぶりに聴いて感心した。これまでこのアランフェス協奏曲は、男性の著名ギタリストの演奏で何種類も聞いてきたが、この村治佳織さんのCDが一番私にはしみじみと3楽章総てに浸ることができる演奏。
 第1楽章では、力強さをおさえてむしろ優美さすら湛えた軽やかな演奏。バックのオーケストラと見事に調和、オーケストラの音量の中にうずもれることなく、目立ちすぎもせず絶妙のバランスといったらいいか、若々しい軽快さが素晴らしい。
 そして、非常に美しい旋律の第2楽章こそこの曲のハイライト、村治さんとオーケストラはこの第2楽章に全力を注いで演奏している。その美しいこと、輝くばかりの旋律美がこれでもかとあふれ出てきて、引き込まれてしまう。村治さんが沈黙したオーケストラを背景に、1人、華麗なカデンツァを演奏するところなど、思わず背筋が震えてしまう。凄い美しさ。
 第3楽章も力むことなくすっきりと聴かせ、第2楽章の余韻に包まれて曲が終わる。
 他の収録曲を含め、このCDに収録されていく曲目を引用しておこう。

1. アランフェス協奏曲(ロドリーゴ)
2. ギターと弦楽のためのセレナード(アーノルド)
3. ギター協奏曲第1番ニ長調op.99(カステルヌオーヴォ=テデスコ)
4. タンゴ・アン・スカイ(ディアンス)

 「ギターと弦楽のためのセレナード」も美しく愛らしい。「タンゴ・アン・スカイ」の演奏は、村治さんの弦捌きがとてもかっこいい演奏。