武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 マクドナルドの定年制廃止について

toumeioj32006-05-24


 今日の新聞に日本マクドナルドが60歳定年制を廃止、本人が希望すれば60歳を過ぎても働き続けることができるようにしたとの記事が出ていた。
 今年度の4月1日から、高年齢者雇用安定法の改正内容の段階的実施が始まり、60歳以上の高齢労働者に吉と出るか凶とでるか、気になっていたことなので少し感想を記す。 (散歩の折に見つけた近所の庭の見事なクジャクサボテンの花)
 そもそも平成16年に成立した改正高年齢者雇用安定法の趣旨は「少子高齢化の急速な進行に伴い、今後労働力人口の減少が見込まれる中で、高い就労意欲を有する高年齢者が社会の担い手として活躍し続けることを可能とするためには、高年齢者が、少なくとも年金支給開始年齢までは、意欲と能力のある限り働き続けることができる環境の整備が必要となっています。」というものだった。簡単に言えば、今後大量に発生するいわゆる団塊の世代の高齢化対策だった。そのための年金支給開始年齢先送りに対する、対応策だった。
 アメリカのような年齢による雇用機会差別を撤廃しようなどという人権推進的なニュアンスのないこの国と企業の側に立った資本主義的な雇用対策だった。
 そして、雇用者側には次のような3つの対応のいずれかをとることが義務付けられた。「①65歳までの雇用を確保するため、事業主は平成25年度までに段階的に、定年の引き上げ、継続雇用制度の導入等の措置を講じなければならない。〜この場合、事業主は労使協定等により継続雇用制度の対象者についての基準を定めることができる。 ②解雇等により離職する高年齢者等が希望するときは、事業主は求職活動支援書を作成し、交付しなければならない。 ③労働者の募集及び採用について、上限年齢を定める事業主は、求職者に対し、その理由を示さなければならない。」
 要するに企業は、①定年制を廃止するか、②定年制を65歳までに引き上げるか、③定年退職後の再雇用制度の導入、このいずれかを導入しなければならなくなったことになる。
 新聞記事によれば、マクドナルドで今後5年間に60歳に達する社員は5名程度という。大げさな記事になっているが、なんだその程度かと拍子抜けしてしまった。
 マクドナルドの場合は、定年制の枠組みそのものを廃止するということだが、60歳以降の雇用条件はまだなにも決まっていないので、何ともいえないが、高齢者が生きているのが辛くなるような就労環境が、この国の社会の底辺に拡大しそうな気がして、心配だ。
 寄る年波に勝てないという言い方があるが、高齢になるということは、精神的にも肉体的にも、生易しいことではないないのだ。60年間酷使してきた体のいたるところが、機会さえあれば崩壊しようと隙をうかがっているような状態と言ったらいいか、若ぶって元気そうにしていても、青年期や壮年期の働き盛りとは、はっきり違う状態になっているのは、紛れもない事実。上手に使ってやればもう少し使えるかもしれないが、この国に蔓延しているような勝ち負けを競わせるような酷使に耐えられるような状態にないことは確か。
 どんな状態で60歳以降の老年期を生きるか、本人次第だとは思うが、出来るならフルタイムの社会活動をリタイアして、悠々自適の暮らしを可能な限り送りたいのが、多くの高齢者の本音ではないかと思う。今回のマクドナルドを筆頭に、今後、多くの企業が定年制度を見直し始める。高齢者の側からの、チェックが必要になると思う。資本の論理だけでは酷いことになりかねないので、あるいは、高齢者の人権を守るための高齢者基本法などが必要になるかもしれない。高齢者の割合が増加するので、政治意識の高い老人達が団結すると面白いかもしれない。