武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『グエルム−漢江の怪物』 ポン・ジュノ監督 

toumeioj32006-09-13

 連日の雨降りで遠出もままならず、急に思い立ってシニア料金で、今評判の韓国製の怪獣映画を見ることにした。ネットの映画評では、好評と不評が混ざっていてよく分からない。自分で見て自分で感じてみようとでかけた。結論から先に言えば、全く退屈することなく、娯楽性溢れるサービス満点の映画を2時間たっぷりと楽しませてもらった。
 ①まず、この種の映画の出来不出来を左右する肝心の怪物の出来、これが素晴らしい。デザインもさることながら、怪物の動きが独創的、これまでに余り見たことのない独特の怖い動き方をする。ユニークな尻尾の使い方など、怪物がこの映画の主人公をつとめるに過不足のない設定となっている。この国のゴジラ映画が、ゴジラの類稀な独創的なデザインによって成功したように、この映画の怪物は、良く出来ている。
 ②怪物発生の背景だが、環境汚染による突然変異を暗示しているところ、設定として無理がない。意外にも、その環境汚染の原因を、アメリカ人らしい人物に置いたところ、吃驚した。ストーリーの何箇所かに、強い反米感情が見られることに驚いた。この点は注目に値する。
 ③家族の絆というか、父親を中心にした家族の結束、兄弟同士の命をかけた救済と復讐の、なんとも分かりやすいストーリー作り。笑わせて、しんみりさせて、飽きさせない展開になっていた。
 ④学生の大規模なデモと火炎瓶が、物語のなかで一定の役割を果たせるお国柄なんだなあと感心した。それにしても火炎瓶の作り方から使い方まで、こんなに詳しく見せていいのかしら。いろいろな映画のパロディーシーンが随所に見られて面白かった。細かい不満はないではないが、2時間をたっぷり楽しませてくれた見て損のない映画だった。
 映画に難しい注文をつけたい人にはお薦めしないが、素直に2時間、スクリーンに釘付けになりたかったら入場料を払って見ることをお薦めする。テレビ画面では、この映画の魅力を楽しめないかもしれない。