『田村隆一詩集』 田村隆一著
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かつて<戦後詩>と呼ばれた現代詩のカテゴリーがあった。若い頃、世界の感じ方、拒絶の仕方などを、鋭敏な言葉を通して教えられた。日本語がこんなにも鋭く、栄光に暗く燦然と輝くこともあることを学んだ。そんな<戦後詩人>の代表者として、田村隆一を知った。その後、英米ミステリーの優れた翻訳者として、クリスティーなどの翻訳本で楽しませてもらった。
そんな故田村隆一さんの代表的な詩集が、ほとんど読めるサイトがあり、時々訪問して楽しんでいる。横書きになっているが、余り違和感もなく、横書きでも十分楽しめる。多分、田村さんの詩が、湿度の少ない硬質の文体で出来ているからだろう。
昔、詩を書く知り合いが、田村さんのある詩を読み、既に完璧に書かれてしまったイメージを前にして、男泣きに泣いたという話を聞いたことがある。自分にやるべき仕事が残されていないと言う意味だ。手の施しようがないほどに、完成されてしまった作品と言うものの見本のような詩編群。
まだ読んだことがない人がいたら、是非、田村隆一詩集のサイトをご覧になっていただきたい。日本語が鋭利なナイフのように輝いている場面をご覧いただけると思う。
サイトの目次を引用しておこう。
『四千の日と夜』(1956)
『言葉のない世界』(1962)
『緑の思想』(1967)
『新年の手紙』(1973)
『死語』(1976)
補遺
この中の田村さんの処女詩集、『四千の日と夜』が特にお勧め。声を硬めに引き締めて音読してみると、戦後10年間(敗戦から数えて約4千日の十一年後という意味の題名だと推測している)の当時の青年の暗く熱い思いが、沸々と伝わってくる。文句なしの完璧な言語作品。